「…只今戻りました。藍染隊長」
藍染の背後から、静かに現れたのはギンだった。
逃げようとしていた全員がギンの登場によって立ち止まる中、呼ばれると同時に視線だけをギンに移した藍染は、ゆっくりと言葉を交わす。
「…戻ったか。彼女はどうした?」
「殺しました」
藍染の質問に、ギンは何事も無かったと言うように答えを返しながら、藍染の元に近付いていく。ギンの言葉に促されるように、藍染は視線をさまよわせ乱菊の霊圧を探った。
「――確かに、霊圧は消えている。…驚いたな。君はもう少し彼女に、何かしらの情が有るものと思っていたが」
乱菊の霊圧を感じない事を確認すると、藍染は本当にそう思っているのか判別しずらい言葉を口にした。
それに対してギンは少しも表情を変える事なく、藍染の言葉に応える。
「情ですか。あらしまへんよ、そんなもん。最初にお会いした時に言いましたやろ」
「僕は蛇や。肌は冷やい、情は無い。舌先で獲物捜して這い回って、気に入った奴をまる呑みにする。そういう生きものや」
「そう、言うたやないですか」
一言呟く度に、二人の距離は縮んでいく。ギンが藍染の傍に着いた頃には、藍染は薄く口に弧を描いていた。
まるで談笑でもしているように。
「…な…。何ボーッとしてんだよみんな!!見てる場合じゃねーだろ!逃げようぜ!!早く!!」
二人の会話から一間を置いて何かに覚醒して弾かれるように、自分の事を差し置いて浅野はたつき達に逃げるよう叫んだ。
その浅野の言葉に導かれるように、全員が再び走り出し自分達から距離が離れていく風景を、藍染は悠長に眺める。
「…やれやれ。鼠取りにも、そろそろ飽きてきたのだがな」
「あの子らを殺した後は?」
「死体を町の外の見え易い場所へ吊してから、王鍵の創生に執りかかる」
「良えやないですか」
ギンが軽く質問をぶつける。すると、ぶら下げていた刀を緩く横に構えながら、藍染の口から物騒な答えが軽い音となって返ってきた。
それに対して傍に居る萌苗は何の反応も示さず、反対に答えを聞いたギンは肯定とも否定とも取れる曖昧に返し藍染の剣の刃を軽く抑えると、そのまま彼よりも少し前に出ていく。
「それやったら、あの子ら殺すんはボクがやります」
「―――ギン」
藍染が何かを言おうとギンの名を呼んだその時、ギンの刀を抑えている腕の方の服の裾が"何か"の風圧によって翻る。
その"何か"は猛スピードで藍染の胸までも瞬時に貫いていた。
瞬間、ギンと藍染。互いの視線と殺気が交差し合った。
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