同時に切れた時の圧に耐えきれなくなった裾が千切れ、その"何か"は姿を現す。
それはまごう事なく、ギンの所有している斬魄刀だった。

「――鏡花水月の能力から逃れる唯一の方法は、完全催眠の発動前から刀に触れておくこと。その一言を聞き出すのに、何十年かかった事やら。護廷十三隊の誰一人それを知るもんはおらへんのに、みんな藍染隊長を殺せる気ィでおるもんやから見とってはらはらしましたわ」

振り向き様に言い終わると同時に、瞬間的に刀の刃は手元近くまで縮んでいた。

「藍染隊長を殺せるんは、ボクだけやのに」

瞬間的、ドッ と貫かれた胸から大量の血が勢い良く吹き出す。
それを力強く掌で抑えるも、抑え切る事が出来ずに間から血が零れ落ちていくのを感じながら、藍染は身体を曲げ苦々しげな声色と表情を覗かせた。

「…知っていたさ。君の狙いなど知った上で私は君を連れていた…。君が私の命をどう狙うのかに興味があったかだ…。…だが残念だ、ギン。君がこの程度で私を殺せると――」
「思うてません」

ギンの思惑などはなから知っていたと主張する藍染。そして失念したとでも言いたげな彼の言葉をギンは遮ると、持っていた斬魄刀の側面を藍染に見せるように、静かに持ち上げる。
その斬魄刀には、少し違和感があった。

「見えます?ここ、欠けてんの」

そう言って刃の丁度真ん中辺りを指差す。そこは少しだけ、抉れるように欠けている。
そしてその後、刃を指した手をゆるりと藍染の胸元に翳した。

「今、藍染隊長ん中に置いてきました」
「…何………?」
「僕の卍解の能力、昔、お伝えしましたね?
すんません。あれ、嘘言いました」
「言うたほど長く延びません。言うたほど迅く延びません。ただ、延び縮みする時、一瞬だけ塵になります。そして、刃 の 内 側 に 細胞を溶かし崩す猛毒があります」
「…解ってもろうたみたいですね。今、胸を貫いてから刀を戻す時、一欠だけ塵にせんと藍染隊長の心臓ん中に残してきたんです」
「…ギン………!」
「喋るんやったら早うした方がええですよ。まぁ早うしても、死ぬもんは死ぬんやけど」

苦虫を噛むような形相の藍染など気に止める事もなく、ギンは飄々とした態度を崩す事もなく、軽く触れる程度に藍染の胸元に手を置いた。

そして

「“殺せ”、“神殺鎗”」
「ギン……貴様……!!」
「胸に孔があいて死ぬんや、本望ですやろ」

ゴボッと音を立て、「胸に孔があく」と言う比喩では済まされない程に、胸を中心に左肩が鎖骨から離れるくらいの大きな円を描いて、藍染の身体の肉が勢い良く消えて無くなった。

それを第三者の様に眺めながら思い出すのは、自分がまだ小さき頃に見、そして死神を目指したあの雪の日の記憶。
その記憶を頭の隅に置き、藍染の身体から離れた崩玉に手を伸ばす。が、横から崩玉を取らせまいと素早く藍染の手が伸びてきて、手首を掴むとギンの身体を弾く。
しかし、無事着地したギンの手には、しっかりと崩玉が握られている。

着地した刹那、ギンは息吐く暇さえ見せずに反対の手で萌苗の腕を掴むと、地面を蹴り上げ二人して藍染の前から姿を消した。
一方の藍染は振り上げた腕をそのままに、重力に従う様に膝をがくりと曲げ、仰向けに倒れた。

「………ギン…」

「うおおおおぉオオオオオオァアああ!!!!!」




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