―…時は少し遡り、萌苗がギンと離れた頃。

「はぁ、はぁ…!」

なるべく速く、なるべく遠くへ藍染から離れる為に、ケイゴ達は息を切らしながら走っていた。
そんな中、突如として萌苗が現れた。はじめは藍染が現れたのかと恐怖と共に、反射的に全員が身構えたが、萌苗だと分かると途端に力が抜けた。が、先程藍染達と共に居たのを思い出すと、また警戒の色を見せる。

「あのガールは…」
「萌苗!」
「うそ!?本当に萌苗なの?」
「…萌苗……」
「……」
「っ、何とか言えよ!お前は萌苗なのか?!」

本人なのか、若しくは似ているだけの別人なのか…。それを問うても萌苗は顔を少し歪ませるだけで答える様子を見せなかった。そんな萌苗を見て強い口調で問うたのは浅野だった。
萌苗は声の大きさに驚いたのかビクリと身体を揺らせると、一度俯いた後意を決した様に顔を上げた。

「…そうだよ」
「何で!?だって萌苗は…」
「それよりも、その腕はどうしたの?」
「ごめん、今は話してる時間は無いの。…それよりも早く逃げよう!さっき一緒に居たもう一人の人が彼に立ち向かってる。その間に…!」
「…」
「待って。それって本当に信じられるの?」

萌苗本人だと分かると、少しだけ全体の緊張感が解けた。
だが、萌苗の言葉に皆が口を閉ざす。さっきの今で、その言葉が信じて良いものか分からなかったからだ。
そんな皆の思いを代弁したのは、たつきだった。

「……大丈夫、信じて」

この場の雰囲気に負けない様にグッと顔を引き締めて、萌苗は力強く言葉を放つ。その瞳に圧されたのか、全員が一度互いの顔を見合いアイコンタクトを取ると、また萌苗に視線を戻した。

「分かった。元々アイツ等から逃げるつもりだし。それに悪いけど、潰し合ってくれれば良いと思ってたから」
「そうと決まれば、こんな所で話してるひまねえだろ!早く行こうぜ!」
「そうだよ。早くしないと追い付かれる」
「うん。みんなは先を走って、私は後ろを走…」

それ以上、萌苗の言葉が続く事は無かった。萌苗の後方から建物が爆破されたかのように破壊され、瓦礫が吹き飛んできたのだ。

「ひっ!」
「きゃ…」

突然建物が崩壊した事に驚きや恐怖の声が上がる。
しまった!と萌苗が後悔するには時既に遅く、煙が晴れていく中で瓦礫の上に降り立つ藍染の横顔が、皆の瞳に映ていった。




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