「粋がっていたのも最初だけか」
萌苗と藍染の力の差は、感じた以上に大きかった。
萌苗が幾度となく剣を振りかざそうが隙を突いて虚閃を放とうが、どんな攻撃をどんなタイミングで仕掛けようとも難なく藍染に受け止められてしまう。反対に藍染が軽く斬魄刀を振りかざすだけで、いくら攻撃を除けようと防御をしようと、簡単に斬魄刀が肌に触れ深く抉られ血が溢れ出る。
藍染がワザと急所を外して攻撃してくる辺り、萌苗がもて遊ばれているのは明白だった。
「クソ、がっ…!」
「紛いなりにも女の子なのだから、そんな汚い言葉を使うものじゃないよ」
「!」
先程まで距離を取っていた筈なのに、いつの間にか背後に廻られていた。耳元で声が聞こえ、間合いを取ろうと身体を捻る間も与えられずに、両脚を斬られる。
斬られた際の激痛に立っていられずに地面にうつ伏せに倒れ込んだ萌苗を藍染は見下ろした。
「君は弱すぎる。この程度の力で良く空座町を護ると言えたものだ」
「…」
息を荒げ、視線だけを藍染に向ける。視界の端で地面に広がっていく自分の血が、荒んでいる息によって波打ってるのが見えた。
―…やばい、血が出過ぎた。視界が霞む。目蓋が…重い…−
−でも…まだ目を瞑っちゃ駄目だ!
時間を稼がないと…!
口を動かさないと!−
−動け動け動け動け動け!!!!―
「…ま…だ……」
「…」
「まだ…わたし、は…やれる…!喩え、身体が殆ど…動かなくなって、も…歯、一本でも動かせる…なら…それで、闘って…やる……!」
「…そうか。なら首を斬り落としてしまおう。そうすれば君の全ての機能は完全に停止する」
そういうと、藍染は虚閃を出せない様に右手を踏み、首筋に斬魄刀を押し当てた。ヒヤリと冷たい刃の感触が首を伝う。
その感触を、萌苗は他人事のように冷静に感じていた。
―結局、私じゃあ護れないのかな。悔しいなぁ…。きっと私が皆に酷いことしたから、罰が当たったんだ…。
最後に皆にきちんと謝りたかった―
何処か諦めにも似た感情を持ちつつ、ゆっくりと眼を閉じる。遠くでケイゴが何かを叫んでいるが、段々と意識が遠くなっていくのもあってか、よく聞こえない。
急に、無いとは判っていながらも、もし彼が自分と同じような環境に遭遇したらどの様に対処するのだろうという考えが浮かび、頭の中で彼の名前を呼んだ。
(…ウルキオラ…)
最後に見たウルキオラの姿を思い出したその時、藍染の身体が自身の上から退いて距離を取ったのを感じ、ゆっくりと眼を開ける。
萌苗の視界が捉えたのは、裸足で一心を片手に抱えた一護の姿だった。
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