『一護』

萌苗……?

『お疲れ様、皆を護れて良かったね』

…俺は、お前を護れなかった。そんなの、皆なんて…言えねえよ。

『一護…』

護れなくて悪かった、萌苗。

『…ううん、良いの。謝らないで。だってあれは、私の弱さが招いた結果だもの。一護が気にする事はないんだよ』

そんな事…っ

『ねえ、一護。また、私の我が儘を聞いてほしいの。これで最後にするから』

……、…分かった。

『…私の事は忘れてほしい。今までの事も、何もかも全部。…私の存在が一護の重荷になるのは、もう嫌だから』

!? …何で、何でそんな事言うんだよ!俺は…!!

『大好きだったよ、一護』


『さよなら』


「あ!!黒崎くん!!」

突然バチっと眼が覚めた。眼を開けた途端、織姫・ルキア・チャド・石田の姿があった。

目を覚ます前に、まるで何かに背中を押されて現実に戻されたような、そんな感覚があった。そして夢を見ていた気がするのだが、何の夢を見ていたのか分からない。
だが、胸の辺りがモヤモヤとする。それは徐々に薄れつつあるが。悲しいような、何かを否定して叫びたくなるような、そういった類の物で。一体、自分はどんな夢を見ていたのだろう。

「え?あれ?ここ…俺ん家か?」
「…あぁ。貴様はあれから一月近くも眠っておったのだ…」
「みんなおちついてる…。あたし一人大きな声出してはずかしい…」
「…一月…。!そうだ!俺のチカラは…」

織姫がぼそぼそと呟いているのはそれとなくスルーして、自分の力を確かめる。すると、それを見たルキアが口を開いた。

「…一護。浦原から聞いた。貴様は…死神の力を失ったそうだな」
「…そうか、聞いたのか。どうもそうらしいぜ。死神代行も返上しねえとな」

眉を寄せ少しばかり辛そうな表情を見せるルキアに、一護は心配させまいとしているのか軽い口調で返した。

「…消失の第一段階では激痛を伴い、意識を失い、断界の中で肉体に起きた時間経過が逆流する。髪が短くなっておるだろう。それは我々が切った訳ではないぞ」
「その時点で死神の力を失い、第二段階で残った霊圧が安定して目を覚まし―――」

「程無く、残る全ての霊力も消えてゆく――――」

ルキアの説明に、一護の視線が皆の方に向けられた。が、その表情は不安等を感じているものではなく、ただ普段通りの表情だった。

「…そうか、やっぱりな」
「…お…驚かぬのか…?」
「…いや、何となくな。そんな気がしたんだ」

そういうと、一瞬哀しげな表情を見せた。

「…外に出ていいか?」


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外に出て、回りを見渡す。

−霊の気配を感じない−

以前なら嫌という程感じられた気配も、今は全く感じられなくなっている。暫く周りを見渡した後、ルキアの姿を確認した。

−ルキアの気配も、少しずつ薄れていってる。
本当に、俺の力は消えるんだな−

ルキアも、一護の中の霊力が底を尽きていくのを感じ、心無しか寂しそうな笑みを見せる。

「――――お別れだ。一護」
「……そうみてえだな」
「何だ、そう寂しそうな顔をするな。貴様に私が見えなくなっても、私からは貴様が見えているのだぞ」
「何だそれ、全然嬉しくねーよ。あと寂しそうなカオもしてねえ!」

先程までのしんみりした雰囲気は何処へやら。軽口を叩きながら互いに距離を縮めていく。後少しで触れ合えそうな距離で、ルキアの身体が徐々に見えなくなっていく。

「…みんなに、よろしく伝えといてくれ」
「…ああ」
「――じゃあな、ルキア」

「ありがとう」


こうして、一護の霊力は完全に無くなった。





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