空座町の各地で各隊が各々の役目を果たし、または空座町にて隊員と合流しているその頃、一護は其処からは離れた場所で、今の状況を表しているかの様な清々しい青空を眺めていた。

「黒崎サン」

そんな一護の背中に向かって声を掛けたのは浦原だった。空を眺めるのを止め後ろを振り向いた一護は、笑顔を携えた浦原に質問をした。

「…浦原さん。…みんなは?」
「お帰りいただきました。皆さん黒崎サンと話したそうでしたが…同じくらい話しかけづらそうでしたんで」
「!まさか、記憶を――」
「…いえ、今回はいじってません」
「…そうか、良かった。もう隠すのもイヤだしな。戻ったら俺の口から伝えるよ」

浦原の答えに聞いた一護は一瞬軽く眼を見開いたのだが、直ぐに笑顔で良かったと言った。それに対して浦原はほっとしたような表情で眼を伏せた後、話題を切り替えた。

「…藍染サンの封印架は瀞霊廷に運ばれました。直に四十六室の手によって処遇が決定されるでしょう」
「萌苗サンは…まだ予断を許さない状態ですが、取り敢えず一命は取り留めました。… ただ彼女を破面に変化させる際、無理矢理何段階も飛ばしみたいで、身体を構成する細胞が人とも破面とも…ましてや死神とも違う物質になっていました。この先、彼女の体調がどう転ぶかは分かりません。全ては彼女の意志次第ですが、完全に回復するまで暫くは瀞霊廷で預かるそうっス。……萌苗サンが完全に回復したら、アタシから黒崎サンに連絡しますから」
「…そうか」

現状を聞くや否や、一護は浦原から顔を逸らし、悲しげに眉を寄せ軽く俯く。

「…どうして、そんな顔をしてるんスか?」

浦原の思い掛けない言葉に驚いたのか、一護は浦原に視線を戻す。が、すぐにまた先程の状態に戻ってしまった。

「…どうしてだろうな。俺にもよくわかんねえ」

否、原因は分かっている。

「皆サンの命も、この世界も、アナタが命懸けで藍染を倒して護ったんスよ」
「…わかってる」

分かってる。確かに藍染は倒した。皆を…空座町を護った。でも…。

「アナタは正しい事をしたんだ。そんな顔をする理由は何もない」

でも、アイツは…萌苗だけは、結局この手で護れなかった。死に追いやりかけてしまった。それじゃあ、全部護ったとは言えない。
それと……

「…なァ、浦原さん。藍染は――――
藍染は本当に――――崩玉に拒絶されたのかな」
「親父が話してくれたんだ。崩玉の能力は、周囲の"心"を取り込んで具現化する事――――
だとしたら、もしかして藍染は、自ら望んで力を失ったんじゃねえのかな」
「俺は、藍染と互角に戦えるだけの力を手にしてようやく、戦いの中であいつの刀に触れられたんだ」
「あいつの刀には、"孤独"しか無かった。
あいつの力が生まれた時から飛び抜けてたなら、あいつはずっと自分と同じ目線に立ってくれる誰かを探してたんじゃねえのかな。そしてそれが見つからねえと諦めた瞬間から、あいつはずっと心のどこかで"ただの死神"になりたいと、願ってたんじゃねえのかな…」

ぽつりぽつりと、藍染の心情に対する自分なりの考えを一護は語る。藍染は何も言わず、ただただ静かに聞いているだけだった。
そんな時、二人の背後から複数の人影が近付いてきた。

「…く…、黒崎くん…?」

聞き慣れた声が二人の鼓膜に響く。振り向けば、織姫を筆頭に馴染みの人物達が、自分達に向かって歩いてきていた。

「井上…石田…ルキア…チャド…恋次…。何だよオマエら…もう起きて大丈夫なのかよ!?」

包帯で身を覆いつつも、彼らの無事な姿を確認して安心したのか、一護は笑顔を見せて立ち上がる。

「貴様こそ何だその…」
「…や…やっぱり黒崎くんだ…。髪が長いから…もしかしたらちがうんじゃないかと思って…。よかった…。…よかったあ…」

ルキアが負けじと反論しようとしたのだが、こちらも一護の無事な姿に安心し切ったのか瞳にいっぱい涙を溜めている織姫の姿を見て、口を噤んで微笑むだけに留めた。
一護もまた泣き出しそうな織姫に困ったような顔をしつつ、皆の元へ歩き出す。

「なんつーカオしてんだよ井上。まァ確かに俺頭ボサボサに」

ゴトン、急に一護の身体が膝から崩れ落ち、倒れた。本人ですら予期していなかった事で。
これには浦原以外驚愕し、直ぐさま一護に駆け寄った。

「一護!!」
「一護ッ!!」
「黒崎くん!!」
「黒崎!」

「うあ…あああああぁああああ!!!!」

叫びと共に、一護の視界は暗転した。




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