暗い、暗い道を歩く。光を垣間見た途端に広がるのは、いつものあの広間。
ああ、戻ってきたんだ。
戻ってきて、しまったんだ。


−−−−−


「ただいま戻りました。藍染さん」
「嗚呼、お帰り萌苗。随分と早かったね」
「そんな事は、無いです」

淡々と続く会話。藍染さんとの会話は、安心するような、心に穴が空いて絶望するような、そんな気分にさせる。
それが怖くて、藍染さんの目を見て話す事を戸惑ってしまう自分がいる。

不意にふと、何も言わずに藍染さんは私を凝視した。どうしたんだと出方を窺っていると、ゆっくりと手招きをされた。どうやらこちらに来いと言っているようだ。
指示を受けるがままに藍染さんの傍まで行くと、下瞼と今は完全に塞がれている切られた箇所を順番に指でなぞられた。その指の動きにくすぐったくて身を捩りそうになる。

「泣いたんだね。眼が赤い」
「……」
「此処は切られたのかい?」
「…はい。少し、いざこざがあって」
「ふ。無茶ばかりするね萌苗は」
「すいません」
「謝る事はない。それより、早く汚れを落として着替えてきなさい。聞きたいこともあるし、話をしておきたい事があるんだ」
「話…?」

小さく呟くと、藍染さんは静かに頷いた。
このまま聞きます。と言おうとしたけれど、藍染さんの言葉は絶対に従わなければいけない事を思い出して口を噤んだ。
私が口を挟んで、時折仕方ないと折れてくれたウルキオラと違うんだ。彼と一緒に行動をしていた時間が長かったせいで、すっかり忘れていた。

「頭が混乱しているなら、ついでに頭も冷やしておいで」
「分かり、ました」

そう言うとすぐ、私は自分の部屋へ行くために、踵を返した。




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ココロ

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