藍染さんから離れて数分後、自分の部屋に戻りシャワーを浴びる。
浴びている間、ああ、一護とは終わったんだ。終わっちゃったんだなぁ…。と、暫くそれだけが頭の中を巡っていた。

あの時は、グリムジョーが割って入ってきてしまったけれど、もし入ってきていなかったら一護は自分を抱きしめてくれていただろうか?
分からない。分からないから怖かった。怖いから思い切り縋り付きたかった。けれども縋りたかったのは一護ではなくて……。

「…ウルキオラ……」

ウルキオラの名前を呼んだ途端に、また涙が出そうになる。ぐっと、タイルに手を置いていた拳に力が入った。
今は居ないウルキオラに、いつもの冷静さで自分を正してほしかった。私の決意を崩したのは彼の言葉だったけれど、また決意を固められるのも彼の言葉だけだと思った時に、自分は彼に依存しすぎだと嘲笑った。
もとより、今は一護よりウルキオラを心は欲しているんだと自覚した途端、切られた箇所がまた痛んだ気がした。

気が済むまで水圧に打たれ続けていた萌苗だったが、新たに意を決意したような瞳の色を見せた。
鏡の湯気を手で拭い、覗いて眼の赤みが引いたのを確認するとシャワーのノズルを閉め、身体についた水滴を拭き取り着替え、さっさと部屋を出ていった。

暗い廊下を無心で歩き、さっきまで居た部屋に戻り藍染達と合流した。藍染達の他にもハリベル、バラガン、スタークと三人の従属官達が待機している光景を、萌苗は呆然と視界に捉えたあと、口を開いた。

「すいません藍染さん。お待たせしました」
「もう大丈夫なのかい?」
「はい」

藍染は、静かに萌苗を見つめた。先ほどとは違う雰囲気を纏った萌苗を見て、密やかに笑みを深める。

「それで、話というのは…」
「ああ、そうだったね。実は、近々計画を実行しようと思っているんだ」
「!……随分と早いですね」
「早いに越したことはないさ。…何度も確認するけれど、本当に空座町を消してしまって良いのかい?萌苗」
「今まで何度も言いました。今更、私の決意は変わりません」

空座町を消しても良いかというのは、此処に来てから度々言われていた。事ある毎に聞かれる質問に、萌苗は表情も変えず、何度も大丈夫だと言った。それに付け加えて今は、出来る事ならその時に、一護や織姫達も空座町と一緒に消してほしいと思った。だが、その思考を強制的に止める。
今の自分が、だんだんと幼稚な考えしか出来なくなっているのに気付いて、心の中でまた嘲笑った。

「それは良かった」
「…藍染さんが私を呼んだという事は、私も一緒に空座町に行くという事でしょうか?」
「否、空座町にはこのメンバーで向かう。君には、もうすぐウルキオラが戻ってくるだろうから、ここで留守番をしてもらうよ。君の霊圧を辿ってウルキオが帰って来られるようにね。それに、黒崎一護を誘き出すのに井上織姫はもちろん、君も必要不可欠な存在」
「……」
「だから、暫く君はこの場に居ておくれ」
「分かりました」
「萌苗は物分かりが良いから助かるよ。…スターク」
「はいよ」

瞬間、萌苗達の目の前からスタークは消えた。他のメンバーもスタークに続くように何処かへと消えてしまって、残ったのは何事もなかったかのように階段を上がっていく藍染とギンと東仙と、この状況に付いていけてない萌苗の四人だけ。
そんな中で萌苗は一人疑問を抱く。
一体、藍染はスタークに何を頼んだというのだろうか。しかし、その疑問は人の気配が増えたおかげで、すぐに解明された。

それは、スタークが消えて数秒後の事で、横に視線を向ければ、今萌苗にとって会いたくない人物が、驚きを露わにした表情で立っていたからだ。




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