終わりと始まりと

人生は、良いことばかりじゃない…


でも



悪いことばかりじゃないと、辛いことがあったら次は必ず良いことがあるのだと…



そう、信じていたんだ……









その日


その一言は


死刑宣告にも等しく



一瞬で闇に落とされたような気分だった…

今思えばこの時に全ての終わりで始まりだったようなきがする……






「ご両親とお兄さんが昨日の夜中に自宅で発生した火事で亡くなった」



最初は、何を言っているのかわからなかった。

心情とは正反対な朝の爽やかな朝日が差し込む見知らぬ部屋で見知らぬスーツを着た男の人は感情を押し殺すような無表情でそう言った。


言っているの内容がわからない訳ではない。

幼心に理解したくないんだと頭の何処か、隅の方で冷静な思考が働く。
ソレを更に奥の冷静な自分が分析していて、
あぁやっぱりあの人たちの子どもなんだと子どもらしくない思考を心の中で嘲笑う。


傍から見れば家族の突然の死を理解しきれない幼子が呆然と立ち尽くしている痛々しい光景なのだろう。

そう思うと見た目と中身のチグハグさが何処か可笑しくて哀しくて虚しくて






あぁ泣きそうだ






「紗良ちゃん」


不意に呼ばれた自分の名前に視線を上げればそこには両親の死を告げた男とは別の男がいた。

この人は見覚えがある。

父の年下の友人。
時折家を訪ねてきては父とその愛用の書斎で談笑していて、ドアの影から眺めていた自分を呼び寄せては色んな話を聞かせてくれたのだ。



「紗良ちゃん」


もう一度呼ぶ。



優しい、見覚えのある微笑み。




「ウチの子に、ならないかい」









その時




私には彼が




深い闇から助けようとしてくれる








ヒーローにみえたんだ………





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