確定事項第五章 運命と言う枷
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ロウは何度でも 何度でも パラレルワールドへの扉を開きました
新しい次元の開き方を調べ、気の遠くなる時間を使い無数の計算式を作り 大量のマナを集め、また次元の扉を開きました
次元の通過のたび肉体は削れ、失ったマナを大気から吸収し
彼女は何度も 何度も
時空を旅しました
私など無くなってもいいから・・・
どうか
どうか
平和を・・・平和をこの地に・・・!
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ロウは絶望し続けました
ある時「戦争のなかった世界」を見つけ出しました
でもそれは「今まで無かった」というだけで、すぐに争いは起きました
ある時「暴力しない心を持つ世界」を見つけました
でもその人々は災害や魔物に抵抗できなくなっていました
争うことを望んでいたはずの人々は本来争いで発散されるはずの想いを遂げられず、苦しんで死んでいきました
遂には「全てが幸せに感じる世界」へたどり着きました
理想郷とも思われたその世界は 全てが狂っていました
ヌケガラは出ませんでした 皆幸せなのだから当然でした
ですが、世界は凄まじい勢いで崩壊していきました
傷つけることも『幸せ』傷つくことも『幸せ』 人々は傷つけ合いました
食べないことも、殺すことも、自殺することも、何もかもが彼らにとって『幸せ』でした
壊し壊され・・・
世界はあっという間に「死の星」になりました
恒久平和はいつまで経っても実ることはありませんでした
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いつしかロウは、地球の外に知識を求め始めました
極限まで高められた技術と遥かな時間を掛け、地球外に救いを求めたのです
新たな触媒と技術を用い、真空中でも活動できる能力や道具を得ました
幾億の時を重ね、様々な生体反応や意思を認識できる能力を得ました
ひたすらに時を掛け ひたすらに身を削り
次元転移を繰り返しながら広大な宇宙を飛び回ります
知を持つ者はほとんど見つかりませんでした
極稀に奇跡的に見つかったとしても彼らの思想は既に試したものばかりでした
ロウの考案した方法は永き時を掛け極限まで洗練されており、その次元まで到達している生態系は見つからなかったのです
中には生命体に同じ思考回路を植え付けることで統率・管理を行う惑星がありましたが、結局それは一つの意志を持つ者の『ままごと』に過ぎませんでした
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度重なる次元干渉 膨大な知
やがてそれらは
ロウを新たな境地へと誘いました
『神』と接触するようになったのです
『神』は
かねてより信仰の対象とされているものでした
多くの人々にとってそれは、おとぎ話の、宗教的な空想上の存在であると認知されていました
ですが『神』は実在したのです
彼らの多くは意思を持つ現象や概念でした
彼らは地上とも、冥界とも異なる次元に存在し、世界の流れを傍観していました
無数の次元に干渉する中で、ロウは次元転移により『神』のいる空間に降り立ちました
ロウは世界の意思に問いかけました
自分よりもはるかに永い刻を生きてきた賢者たち・・・
どうか私に答えを教えて欲しい!!
神々は口を揃えました
「かつて・・・我々神々の中に、お前のような者がいた 我々よりもはるかに永く生きた神だった」
「そいつにも 地上に恒久平和をもたらす事は出来なかった」
ロウは悲しみました
諦めず次元転移を繰り返しました
どの神も 同じ言葉を繰り返していました
「もうよせ、これ以上知るな」
「無意味なことをするな」
ロウは止まりませんでした
やれないかどうかなんて分からない・・・
私はどうなってもいいから
どうか 答えを・・・
答えを・・・!!
次元を超え、世界中を駆け巡りました
星を 銀河を 宇宙の果てを 次元を
永い
永い
とても永い旅
同じ星が生まれ変わる姿を
ひとつの宇宙が生まれ変わる姿を
幾千 幾万と確認した頃
ロウは
最後の神に出会いました
それは 全ての始まり
それは
それは 死んだ星でした
最初に世界を創った ビッグバンを起こした星 その残骸でした
創世神は語りました
ロウに語りかけるものは言葉ではなく、星から感じる『なにか』でした
「・・・この世界には『どうでもいい』ものがある・・・自分にとってなんの害悪もないものだ」
「それを深く知るほど、理解したいと触れるほど、それは形をおびてしまう」
「存在意義を持ち・・・やがてそれは『どうでもいい』ものではなくなってしまう」
・・・どうでも、いいもの・・・
「これ以上、お前が知る必要は無い」
「この世界はお前にとって『どうでもいい』ものなのだから・・・」
〜〜〜〜〜〜
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現世は何も変わらないままでした
ロウが次元転移したトキ村は、いつも通り 緩やかな風が通り抜け、人々はのどかに暮らしていました
小さな水場には小鳥が集まり、小麦畑には、さんさんと太陽が照りつけていました
世界は何一つ変わってはいませんでした
ただ一人の少女を除いて
トキ村のはるか上空
ロウは空にフワフワと浮いていました
体は山を見下ろすほど大きくなっていました
大気中のマナを我がものとし、肉体に転換する『次元転移術』
彼女がマナを吸収し行使する一方で、彼女もまたマナに蝕まれていました
度重なる次元転移
全身に打ち込まれるエネルギーの波
彼女の肉体は形を保てなくなるほど消耗し、大気中のマナに溶け込んでしまっていたのです
マナを乱用し続けた報いか 世界の意思か 運命か
マナを行使していたのはロウではなく、彼女自身がマナに取り込まれていたのでした
極めてマナに近しい存在となったロウ
人間の目から空気を認識できないように、大気と一体になったロウを認知できるものは誰もいなくなっていました
神々の言葉が胸に刺さります
どうでもいい世界・・・
・・・違う!
ロウは否定したい気持ちでいっぱいでした
自分が愛した地上を『どうでもいい』なんて思わない!
・・・でも、答えは
答えは・・・
平和は・・・
・・・
ポチャンッ・・・
ロウの涙が大地に溶け込みました
止まらない涙は、地上の人々からは止まない雨に見えました
雨は何年も 何年も降り注ぎました
乾いた大地に緑が広がり
涙の粒は大きな湖となり
やがて一つの川を作りました
ロウが気づいた頃には足元には大勢の人が集まり、小さな村に新たな家屋が立ち並んでいました
また・・・
また私のせいだ・・・
ロウは立ち上がり、北へ北へと歩き出しました
ポロポロ涙がこぼれました
世界中の人に謝りました
ごめんね ごめんね
涙は雪となり、北の大地に降り注ぎました
ロウはいつしか誰もいない極寒の地に腰を下ろしていました
誰も傷つけないように
誰の邪魔にもならないように
長い時を経てなお座り続けていました
彼女の涙が作った川の流れは地域一帯に潤いを与え、世界中の拠点へと繋がっていきました
有数の貯水池となった湖は肥沃な大地を作り上げ、トキ村を発展させ 街へと栄えさせ、長い年月をかけ、いつしかひとつの国を創り上げました
世界各地との交易ルートを兼ね備えたトキ国はやがて世界有数の中心都市となり、全世界の貿易と情報の拠点として名を広めることとなりました
ロウがその事実を知ることは
ありませんでした
第五章 完
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