運命に抗う少女第五章 運命と言う枷
〜
次元転移の準備は整いました
次元が最も安定しやすい緯度・経度
次元開閉に消耗する特殊な媒体
次元転移に必要な蓄積マナ・マナ放出力
一帯をマナの渦が覆います
稲妻が落ち 強風が舞い上がり徐々に空間が歪み始めました
ロウの吸い込みあげたマナが一気に放出されます
ゴオオォォォオォォッッ!!!!
カッ!!
同時に天を覆う雲は吹き飛び、凄まじい閃光が放たれました
風は止み
トキ村は再び
のどかな風景に包まれました
〜
ロウは苦しみにもがいていました
時間軸の通路では無数のエネルギーが飛び交い、それがロウの全身に叩きつけられました
超高圧、灼熱、暴風、稲妻・・・ 暴力という暴力が無尽蔵に少女の体を切り裂きます
傷口から傷口が生まれ、肉体は崩壊と再生を繰り返していました
想像を絶する苦痛に苦しむロウ
でも、彼女は次元転移を諦めませんでした
この先に答えがある・・・
そのためなら・・・私は・・・
私はどうなっても構わない・・・!
永き 永き次元の通路
実時間 数光年という遥かな次元移動
痛みに耐え、苦しみをこらえ
ロウは突き進みました
ドサッ!!
ロウは地面に叩きつけられました
ムックリと顔を持ち上げ、目をゴシゴシとこすりました
・・・ここは・・・!
緑の広がる大平原
そこは、かつてロウが冥界から地上に降り立った地点によく似ていました
次元を超え平行世界に降り立ったのです
ロウは付近を探索しました
あちこちに懐かしい風景が広がっています
懐かしい顔ぶれの人々が歩いています
ロウは感激しました
そして、何よりも・・・
戦争が・・・起きていない!
当時ここでは激しい合戦がありました
ですが、この世界では起こっていません
戦地で見たはずの顔ぶれが楽しそうに畑を肥やしています
〜
ロウが求めたどり着いた世界
それは「戦争」という概念のない世界でした
最も大きな争い「戦争」
それが無くなれば、平和に大きく近づくのではないか、とロウは考えていました
彼女はその世界への扉を開く方法を探し当て、降り立ったのでした
〜
これだ・・・この世界だ!!
私が求めていたのは・・・こんな世界だったんだ!!
ロウは感動のあまり、涙を流していました
道行く人たちは不思議そうに彼女を見ていました
脇目もはばからず少女は泣いていました
思想へ影響を及ぼす技術は確立している!
これを現実世界で実践すれば・・・少なくとも戦争は止められる!!
平和への大きな一歩となる!!
ロウはスキップしながら嬉しそうに街へ入っていきました
・・・
戦争がない世界がそうそう都合のいいものではないと ロウは痛感することとなりました
ひとつの『手段』が無くなれば、新しい『手段』が生まれるもの
そんな単純なことを 彼女は知らなかったのです
街からは以前と変わりなくヌケガラが浮かんでいました
『戦争』に守られていた者たちが絶望の果てに命を落としていたのです
本来戦争のおかげで生計を立てていた油や鉄鋼を売買する者たちは、職を失っており路頭に迷っていました
軍人だった人々の多くは他の職業への適性がなく、仕事を失っているばかりか、その血の気の多さから犯罪を犯す者が大勢いました
街の外でも問題は広がっていました
現実世界では油田や希少鉱石の算出により栄え多くの国民を迎えていた資源産出国は、輸出物資の多くが売り物にならなくなり貧困国になっていました
当然そんな国が広大な領土と多数の国民を維持できるわけはなく、国はスラムと化しました
本来戦争で使われるはずだった武器の数々は国民の手に渡り、売りさばかれ犯罪行為を助長していました
そこは
『戦争のない世界』ではなく、『犯罪が戦争の代替品になった世界』となっていたのです
正しく行使されるはずの武力は悪意にまみれた暴力に生まれ変わり、現実世界以上の悲しみと憎しみを生んでいました
ロウは悲しみました
ごめんなさい ごめんなさい
ロウは再び次元の扉を開き、現世に戻ってきました
開いてしまった歴史の傷跡を再び閉じることに決めたのです
ロウは
ロウは諦めませんでした
必ず見つけ出す
平和な世界を
この手で・・・必ず・・・!
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