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ディアー.へ




私はディアー.
賑やかな教室
ちょっと賑やか過ぎるぐらい

他の子たちが部屋中飛び回る中
キミは真剣な眼差しを私に向けている

今日の私は白のワンピース
一番お気に入りのワンピース
アクセントには金の首飾り
おしゃれだけど ちょっと大きいかな?

長いにらめっこ
キミは少しずつ 想いを縫い合わせる
紙飛行機を飛ばす男の子
ベランダで大声を上げる女の子
校庭ではラジオ体操
キミはどれにも目をくれず
真面目な顔で 服を彩る

この「言葉」がどんな人に届くのか
それはよく分からないけれど
キミは強く願っている
たくさんの想いを たくさんの願いを

外へ駆け出す子供たち
桜の木の下に みんな集まる
小さな木のそばに 小さな穴がひとつ
ワクワクしながら キミ達は歩いていく

いろんな子達の想い共に
私は暗い部屋に押し込まれる
とても頑丈で厚い箱
一筋の光も通らない 闇の中
土のかぶさる音
ゆっくり ゆっくり遠ざかっていく
静かな部屋の中
私は緩やかな眠りにつく


大地の鼓動が
刻の流れが
私を少しだけ揺らした頃


強い日差しが部屋を照りつける


ひらり ピンクの花びらが私の上に

舞い上がる桜吹雪
巨大な桜並木が空を薄紅に染め上げている
大勢の人たちが私たちを取り囲み
箱へ各々手を伸ばす

なんだろう
とても懐かしいような
このワクワクした空気も
みんなの表情も
どこか・・・

・・・あ!

やあ 久しぶり
大きくなったね
そうか キミ達だったのか
あれから 随分時間が経ったんだね
私は何も変わらないままだから
全然気付かなかったよ

キミは私に縫い付けられた
自身の名前をぽつりと呟く
そうだよ キミが彩った私
・・・私?
そうか この「言葉」


キミ自身に届ける「言葉」だったんだ


ほら 懐かしいでしょ
あの時キミは大真面目に
「今」のキミを心配していたよ
体の弱い自分が どんな大人になれるのか
こんなに大きな夢を持っても大丈夫なのか って

でも キミは叶えたんだね

胸元に輝く金メダル
キミの友達が笑顔でキミの肩を叩いてはやし立てる
あれからキミは頑張って
血のにじむような努力をして
何度も挫折して 何度も泣いて
それでも 夢に向かって走り続けたこと
いくつもの試合を経て
いくつもの困難に立ち向かい
何年も 何年も頑張って
手にした 栄光の金メダル

キミ達の「言葉」で
私の「言葉」が鮮やかに彩られていく
あの時の時間が
今のキミ達と交差する

ありがとう キミはつぶやく
昔のキミに向かって キミはつぶやく
キミがいたから 今のキミがいる
この「言葉」は
きっとキミをもっと強くするだろう

私はキミに運ばれる
その手にはワンピース
折り紙で作られた金メダルと共に
あの日 あの時の想いが詰まった
未来のキミに向けられた 大事な服

私はキミの家で飾られる
階段の踊り場 額縁の中
たくさんの人が通り過ぎる場所
たまにキミは立ち止まり
優しい笑顔と引き締まった顔をのぞかせる
ヨシっ おしっ!! だって
今でもキミを支えてるのかな?
なんだか嬉しいね

陽の光に当てられ 焼けていく私
居間に飾られたり インタビューの為取り出されたり
あっちこっちへ移動する私

いつしかキミに中々会わなくなる
でも 時々会うキミはいつも笑顔だ

私の首に掛かったたくさんの金メダル
私の横に添えられた山積みのトロフィー
キミにとっての宝物と一緒に
私はキミがいなくなる時まで座っている
もうボロボロで 誰も必要としていないけど
キミにとっての宝物であり続けたこと
キミの心を支え続けられたこと
私は誇りに思うよ


私はディアー.
看取られることもなく消える私だけど
こうして看取ることができたことは
とても幸せだと思いたい



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