To 1998:09/19ディアー.へ
私はディアー.
暗い台所に独り座っている
今日の私は灰色のジャージ
どこにでもありそうな私のカタチ
一番身近で 一番地味な私
でも この服もなかなかステキ
彩りは控えめ
綺麗な優しい「言葉」と共に
へニャヘニャの平仮名が縫い付けられている
カチカチ時計の針の音
蛍光灯の薄明かり
台所のひんやりとした空気の中
私はキミを待っている
車の音も聞こえない
とても静かな部屋に物音
おかえりなさい お疲れ様
薄明かりの部屋 古びた椅子に
キミはだるそうに腰を掛ける
チラリとテーブルに目を向けるキミ
フフッとこぼれる笑みが私に向けられる
冷めたシチューのお皿を持ち上げるキミ
笑みを浮かべながら電子レンジを開く
キミが頑張ってくれるから 彼女も頑張れるんだよ
仕事も大事だけど 明日から休みなんだし
息子さん連れて 皆で遊びに行こうよ
ほんの十数文字の「言葉」だけど
キミにはきっと伝わるはず
彼女の気持ち 子供の気持ち
ガンバレ パパ
毎日 お疲れ様
寝床に向かうキミ
置いてきぼりの私
真っ暗になった台所
きっと私は明日にはグシャグシャ
それが普通だと思う
でも私は知っている
ステキな「言葉」が伝わったってこと
私はディアー.
消えゆく私はちゃんと見ていたよ
リュックを背負って車に乗り込む君たちを
幸せそうに笑う君たちを
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