To 1995:11/17ディアー.へ
私はディアー.
窓の外は一面銀世界
ぬくぬく暖かいこたつの上に
ミカンと湯呑みと私
今日の私は茶色のジャンパー
ここはとても寒いから 暖かい服でお出かけするのかな?
私は別に寒くないけれど 今日の私は厚手のジャンパー
キミは彩る たくさんの「言葉」
会えない分 会いたい分の
たくさんの想いが詰まった「言葉」
電話だけじゃ伝えきれない たくさんの「言葉」
溢れる今の思いが そのままキミの手を伝って
私の服に縫い付けられていく
傷だらけの手から解き放たれる私
足元にはたくさんの野菜
ジャガイモ かぼちゃ ニンジン お米
土だらけの部屋 茶色の天井が降りていく
隙間からこぼれる光が消えて
私の体が運ばれていく
イタイイタイ!
いつもと運び方が違うから
野菜に私は押しつぶされる
頭にジャガイモがゴチン!
メロンが横からドシン!
ジャンパーで良かった
ワンピースだったら 今頃ボロボロだったよ
ガタゴト揺れる暗い部屋
ジャガイモに埋まって落ち着く私
ひんやりとした空気がやんで
どこか温かい風が隙間を縫う
ビリビリとガムテープをはがす音
茶色の天井が開け 光が差し込む
どうやら無事に着いたみたい
ジャンパーはくしゃくしゃだけど
なんとかなるでしょう
向こうとは違う とても暖かい陽気
窓から差し込む木漏れ日が 部屋を優しく照らしている
たくさんの野菜に キミは呆れたような顔をしているね
キミが小さい頃から食べていたものが ここでも食べられるんだ
せっかくだから 頑張って調理してみようよ
ジャガイモがどかされ 私に光が当たる
服は土まみれ グシャグシャだけど 「言葉」は大丈夫
キミは私に気づいて ジャンパーの土を優しく払う
こんにちは 「言葉」をどうぞ
キミは目を細めて苦笑い
そりゃそうだ
うんざりするようなお説教 自分には関係ない近所話
彼女は出来た? サークルは楽しい? だって
いつも帰ってくるたびに聞かされてるようなことばかり
それが延々と続いているんだもん
やんなっちゃうよね
でもキミはちゃんと「言葉」を追いかけている
彼女の想いは ちゃんとキミに届いているんだ
大切な息子を想う母親の気持ち
おせっかいで めんどくさくて 呆れてしまいそうで
でも とても落ち着く 暖かい言葉の数々
ちゃんとご飯は食べてる? だってさ
鼻をすするキミはちょっぴり寂しそう
こんな何気ないものが 今はとても幸せだったって感じるよね
積み上げられた野菜を夕日が照らすまで キミは「言葉」に浸っている
しわくちゃになったジャンパーをクシャクシャに丸めて投げ飛ばし
野菜を台所へと運んでいく
次会えるのは正月か 早く帰れるといいな
そんなキミの言葉が聞こえて
私は眠りにつく
私はディアー.
キミの「言葉」を楽しみにしている人がいること
どうか 忘れないで欲しい
- 8 /21-
[*前] | [次#]
■にじくも小説投稿地■
ALICE+