「 やっと見つけた 」
その時、天気はどしゃ降りの雨だった


授業が終わり、窓から外を見てみると空は雲に覆われ、夕方とは思えない程に暗かった。
学校から家までは少し遠く、家路に就く間にも降ってきそうな雲行きだ。
名前はあいにく傘は持っておらず、まあ家に着くまでは大丈夫だろうと脳天気に考え友人に挨拶をしながら、いつもより少し早く足を動かした。


「最悪・・・」
ふと口から零れ、空を見上げる。
空からは大粒の雨が降ってきた。雨はどんどん地面を濡らす。
名前も例外ではなく、雨宿り出来る場所まで避難した頃にはずぶ濡れだった。制服の濡れた部分はいつもよりも濃い色に染まり、雨の激しさを物語る。
名前はポケットからハンカチを出し、髪や制服を拭おうとする。何もやっていないよりかはマシだと思ったのだが特に変化は無いように見える。
「(名前)・・・?」
ふとその時、名前を呼ばれた。濡れた制服から視線を変えると、正面に少し暗めの赤い髪に制服を身に纏った長身の男が傘を持って私の方を見て立って居た。
制服を見る限り他校の生徒だ。勿論他校に友人など居らず、交友関係もあまり広いとは言えない。
それなのに、今正面で目をまんまると見開き、口を開けてるこの男は私の名前を呼び、見つめ静止している。ぽかーんという擬音がとても似合いそうな顔をしていて、少し面白かった
「あの、」
あまり見つめられるのが少し恥ずかしくなり、私から声をかけると男は傘を放り投げ、雨で濡れているにも関わらず私を抱きしめてきたのだ。
「あの、ちょっと!」
「名前・・・やっと見つけた・・・」
抗議しようと口を開くも男に被せられ、力ずくで離れるにも男女の差がありそれは叶わなかった。
ああ、なんだか懐かしい匂いだな、と思っていると男が私を離した。
「名前、ずっと会いたかった・・・探していたんだ」
「今から時間はあるか?今のお前の事をもっと知りたいんだ。」
「いや先に言う事があったな。お前に寂しい想いをさせてしまった。先に逝った俺を許してはくれないか?」
何も言わない私の返事を待っているのだろう、男は黙った。
許すも何も、私は貴方の事を思い出せないのだから
「あなたは、誰ですか?」
そう言った時の男の顔を見て、何故だか心が痛かった。