その日、少し時間に余裕が出来た俺は子供達が喜びそうな菓子を袋いっぱいに詰め、そこに向かった。
子供達の様子を伺った後は彼女の所に行こう、と頭の中でこれからのスケジュールを歩きながら大ざっぱに考えていた

俺の恋人である名字名前は花屋を営んでいる。店はそこまで大きくはないが、名前にとても似合う場所だった。
たまたま店の前を通りがかった俺が一目惚れをし、太宰の助言などを得て晴れて恋人同士になり、もう数ヶ月は経つ。
太宰にはうまくいってるのか、どこまでいったのかとよく質問される。名前と会った時の事を話すと上の空であまり聞かれてはいないが、まあ太宰らしいっちゃらしい。
恋人に会ったらどうしようか。最近は安吾探しやジイドとの交戦などで忙しく、ここ数日は会えずにいた。最下級構成員の俺にとっては毎日ではないが2日に1度は会う時間が作れるのでここまで時間を空けるのはいつぶりだろうか、もしくは初めてかもしれない。
早く恋人に会ってこの手で抱きしめたい、と思ってしまう俺はだいぶ毒されているな、などと考え足早に子供達の所に向かった

まずは子供の世話を見てくれている親爺さんの所に向かう。
ドアを開けると、そこには椅子や棚は倒れ、どこからかは嗅ぎ慣れた鉄のにおいが充満され、いつもの光景は無かった。
何が起こっているのか理解出来ず、厨房の中を覗くと片手にはフライパンを持ち、胸を真っ赤に染めている親爺さんが倒れていた。
恐らくフライパンで防御しようとしたのだろうが、あいにくそんな機能は備わっておらず、胸を貫通していた
子供達の様子はどうなんだろう、気持ちだけが先走り足元が覚束ない中、子供達の名前を呼びながら2階へと上がる。
玄関のドアを開けると、血だまりの中に女が倒れていた。長い髪で顔が隠れぱっと見では判別がつかない。
頭の中での警告音が鳴り止まない中、女を跨いで部屋へと向かう。そこも部屋中を荒らされ、もぬけの殻だった。
ベッドに地図がナイフで固定されているのを発見したが子供達の姿が見当たらない。外から何やらエンジン音が掛かる音がして、窓の外を見る。一台の自動車の中に、子供達が一瞬こちらに向かい助けを乞う姿が見えた。
窓から飛び降り、車に向かって走るが、その車が爆発し、身体が投げ飛ばされた。

先程見つけた地図を取りに向かう為、子供達の部屋へと足を運ぶ。
玄関で倒れていた女は何者なのだろうか。倒れてる女の髪をどけ、顔を覗き込んだ
「名前・・・?」
まるでこの世のものでもないものを見たように見開かれた目、少し空いた口。その顔は間違いなく恋人の名前だった。
恐らく遊びに来たのだろう。子供達の事を知らないような浅い間柄でも無かったし、何度か招いては子供達とよく遊んでいた。
俺が行っていない間にもちょこちょこ遊びに来ていた名前がここで倒れているのは理解出来た。
「名前」
だらり、と力なく倒れる名前の頭を引き寄せた。久しぶりに抱きしめた恋人は、まだ暖かかった。
少しして恋人を寝かせ、見開いた目を閉じさせた。本来の目的である地図を取りに行くため子供達の部屋に向かい、そこに向かうための準備を行う。
1人1人子供達の名前、顔を思い出しながら淡々と準備を進め、その部屋を後にした。
玄関で横たわっている恋人だったものの側にしゃがみ、少し空いた口に自分のそれを押しつけた。

おやすみ、名前
静かに眠ってくれ


いってくる