政府機関に配属される内務省異能特務課に在籍している私、名字名前の同僚は社畜である。
坂口安吾は参事官補佐という地位に就いている。地位が高いが故に流れ込んでくる仕事の量やこなさなくてはいけない事が沢山あるようで、寝ている時も仕事、起きても仕事、時間があれば仕事。最早仕事と結婚しているような人間だ。
彼とは仲が善い為、必然的に側近の2人とも会話をする機会が多い。そこで聞いた同僚の社畜武勇伝なのだが、私が不在の時の同僚は凄かったらしい。「帰らなければ出社しないで済む」やら「眠らなければ起きなくて済む」やら迷言を言い始めただとか、寝ながら電話を受けパソコンに打ち込んでいるとか神妙そうな表情で私に相談してきた。否、そもそも私はそんな姿の同僚をこれまで1度も見た事が無いのでどう対処して善いか分からないが、その域に達すれば最早病気なのではないか?と逆に心配になった。
そうなる前に私の出番なのだと側近の1人である青木に云われた。確かに地位や立場は違えど互いの事をよく見ているし、ちょっとした異変などもそれなりに分かる位には彼との仲は良好だ。故に、これ以上無理をさせると危ないだろうと云う所で彼に無理矢理時間を作らせてガス抜きさせるのも私なのだ。余談であるが、何かやらかして彼の心労を大きくさせお小言を云われる事が最も多いのも私である。否、そもそもやらかしていない時でさえ私の昼食を見ては「栄養が偏っている」やら何かと口うるさく色々云ってくるのだ。実は彼は私の事が好きなのではないか?ん?好きだろう?ん???彼の口車に乗せられ数度は栄養たっぷりの手作り弁当を作って来た事があるし、何なら同僚に押しつけてあっと云わせた事はあるが、飽き性の自分は数日でコンビニ弁当に戻った。
話を戻そう。とりあえず社畜の同僚はガス抜きがべらぼうに下手なのである。適当に生きて適当に書類作ってたまに締切に追われてる私とは大違いだ。
「先輩、名前先輩!坂口先輩なんとかして欲しいっス!」
「名前さんが2人に見える」
「こっっっっっっっっわ」
限界を迎える前に何かと気に掛けていたが、こちらの仕事も立て込んで短期間の出張から帰ってきたらこのざまである。
今までの比じゃない位憔悴しきっている同僚は、もう半分以上魂がごっそり抜けているのではないかと思う位の風貌であった。頬は痩けげっそりとした表情には何も映す事は無く、血色も悪いし隈も酷い。逆によくここまで仕事したなと褒めたい位だ。
「うん、とりあえず寝よう。話はそれからだ」
仕事があると椅子から立ち上がらない同僚を抱き上げて仮眠室に連れて行き、ベットに放り投げればものの数秒で眠りについた。
「名前先輩、漢っスね」
「火事場の莫迦力ってもんよ」
こちらも仕事に出突っ張りで疲れてるのだ、少しハイになっているから出来た芸当なだけで毎度同僚を抱える事など出来ない。眠った同僚を確認してから後は2人に任せ、報告書を書き上げた。

「ん…?」
「あ、起きた?」
余程疲れていたのか、同僚は何時間も起きる事は無かった。その間に私は自分の報告書を書き上げ、自分でも肩代わり出来そうな同僚の持っている案件を少しだけ減らし、彼が起きた時に少しでも栄養が高く胃に溜めれる物を作っておいたのだ。
「ここ、は」
「仮眠室」
書き置きの手紙を書いてる最中に目を覚ました同僚に今の状況を説明すれば、頭を抱えて長い溜息を吐いた。
「仕事が…」
「一寸だけ片付けておいたよ。ほれ、仕事の前に食べなさい」
「…すいません、僕まだ疲れてるようです。もう1度云って頂けますか?」
「仕事の前に食べなさい」
「そっちじゃない」
同僚に料理を押し付けながら自分が片付けた報告書の説明をしていく。彼の性質上、きっと食べながら仕事をしそうであったので耳だけ貸して貰った方が仕事をしている感が出て善いだろう。寝ぼけ眼のままモソモソ食べる同僚は次第に目を見開き、最終的には驚愕した表情でこちらを見つめてきたので、少しドヤ顔をしてやった。
「え、これは夢ですか?」
「夢か判断する為に殴ろうか?」
「名前さんが…?そんなに終わらせ、え、嘘…えぇー…?」
出来の善い同僚を持てて善かったねと言葉を投げかければ、「普段からちゃんとして下さい」と云われた。解せぬ。