さて、今日も見回りに行きますか!
私の仕事の内、事務仕事がそこまで溜まっていない時はある程度の範囲の見回りだ。
武装探偵社やポートマフィアなどの異能力者の拠点が多い横浜付近まで出向き、衛星映像では感知し辛い狭い道などの確認も仕事の1つとなった。偵察班では私のような小柄になれる異能を持つ人は少数、尚且つ純粋な戦闘力が1番高かった事で私が任命された。ここは他の平社員とは違うぞ!と得意げに話せる仕事の1つだ。ビル内で引きこもるのも結構しんどいし息抜きには最高だ。
さて、今日はどういうルートで回ろうか、と異能を使い黒猫の姿のまま横浜を歩いた

ここら辺は特に問題無さそうだ、とキョロキョロ顔を動かしながら道を歩く
もう少し人気が少ない方に行ってみるか。確かこっちのルートに細道があったな。
頭の中で地図を思い浮かべる。
「そういや国木田君」
「何だ」
「黒猫が前を横切ったら不幸が訪れるよね?」
「まあ迷信だろうがな」
ふと黒猫という言葉が聞こえ、上を見た。
武装探偵社で働いている包帯グルグル巻きの太宰治、理想という手帳を持ち少し苛立ったような顔をしている国木田独歩が居た。太宰はどうやら前を横切った黒猫(私)にバッチリ目を向けていた
さて、逃げよ「黒猫さん黒猫さんどうか私に死を!出来れば安らかな!」立て膝で何やら崇めるようなポーズを取る太宰に、この人全力すぎると項垂れた。
やばい人に絡まれた。逃げようとするもんー?と首を傾げとてもいい笑顔をしながら阻止される。
「道草食ってないでさっさと行くぞ」
「ちょぉーっと位いーじゃん」
「お前のせいでただでさえ予定が10分も遅れてるんだぞ。これ以上予定を崩されてたまるか」
「えー」
「えーではない!貴様は俺の理想を崩すのがそんなに楽しいか!」
「うん楽しい」
「貴様ァ!!!!」
国木田に顔を向けて話し込む太宰によっしゃ今だ!と逃げようとするがお腹に腕を回され、抱き上げられた。あれ?そういやこの人の異能力って・・・
触れた者の異能力を無効化する異能力だ。気づいた時には遅かった。太宰の異能力が発動したのだろう、ポンッという音と共に人間の姿になってしまった。
「ありゃ?」
「ア、アハハ・・・ハ・・・」
明らかに猫の毛並み、質量では無くなった私に目を向けた太宰。国木田も目が飛び出そうな程こちらを見ていた。
パッとお腹に回された腕が離され、肩を掴まれ太宰と向き合う形にされ、片手を取られる。
「これはこれは美しい女性よ、」
「お、お疲れ様でしたぁああ!!!」
バッと手を振り払い脱兎の如く人の姿のまま先程思い浮かべた地図の細道まで走る。先程の2人が見えない所まで来た事を確認し、ゼェゼェ息を整えた。
まずいぞ〜〜〜!これはまずいぞ〜〜〜!!!もし偵察しているのが知られたら、異能特務課と知られたら。グルグル頭の中でマイナス思考が巡る。
こりゃ安吾のお小言、いや説教コースか、と肩を落としながら三毛猫の姿になって細道を歩いた。