※文ストの世界に帰るif。本編がまだどうなるか分からないので番外編で供養
※文ストの知識ばかり
※オクタ寮の双子が酷い
※ツイステキャラは3章までに出てくる主要キャラまでしか居ません。
見つけた、見つけた、見つけた!
ずっと待ち焦がれていた、元の世界に帰る方法。その手がかりを漸く見つけた。
私の世界には、白紙の文学書というものがある。
表紙にも、中にも何も描かれていない真っ白な本。その本のページに文字を書き込めば、書いた通りの世界になる。
燃やそうが異能力を使おうが、決して消滅しない代物という言い伝えのある本だった。
その本が、何故かこのナイトレイブンカレッジの図書室に紛れ込んでいた。
最初は可笑しいと思った。何でこんな本があるのだろう?誰かが魔法で作り出したのだろうか、それとも他に何か理由が?
落とした拍子に、グリムの燃えた耳に直撃した。「何するんだゾ!?」グリムに怒られたがどれどころじゃない、本が黒焦げになってしまってたら大変だ。
落とした本の表紙を見た。
本来だったら、きっと黒くなってる筈の表紙が、全く傷も付いてない綺麗な状態だった。
そこで私は気づいたのだ。これが白紙の書なのだろうと。
正直、初めて見た。白紙の書は都市伝説とさえ言われている程の代物だったからだ。横浜の地にあると言われていた本が、何故ここにあるのだろう?
疑問に思いはしたが、これがあれば元の世界に戻れる。自分の直感がそう告げていた。
学園長室に行き、部屋の主に報告した。
「もしかしたら、元の世界に戻れるかもしれない」。顔の半分を覆い隠す彼の目からは心情を読み取る事は出来なかったが、彼は案外リアクションが大きくて驚いたと言わんばかりに「おぉ〜〜〜!?」と叫んだ。
「それは良かった!私も色々探したんですよ?探したんですが一足遅かったようですね。いやあそれにしても本当良かった!」
「まあ、本当に帰れるかは分からないのですけど…」
「物は試しですよ。本当に帰れるかもしれませんし。いやあそれにしても少し寂しいですねえ…日取りはいつにするんですか?」
「私が元の世界で飛ばされただろう時間帯…そうですね、深夜2時頃、でしょうか」
「それはまあ随分夜更けですね。」
白紙の書については、よく分からない。
この本を見つけてから、色々考えた。私は太宰のようには頭が良くないから、色んな可能性を考えて、考えた。
結果、闇の鏡を利用して元の世界に戻れる事を記載すれば、こちらとあちらの世界が繋がって帰れるかもしれないと思い至った。ここの住人は故郷に戻るにもあの鏡を使うらしいし、そちらの方が可能性が高い気がした。
「闇の鏡の使用を許可して頂きたいんです。」
「分かりました。では深夜の2時ごろに、そちらで」
「有難う御座います」
寝ているグリムの頭を撫で、私はベットから起き上がった。
ここの世界の衣服を脱ぎ捨て、元々の世界で着ていた服を着る。仕込みナイフや毒針、拳銃。隠し武器を全て装着し、忘れ物が無いか最後に寝室を確認する。
「今までありがとね、グリム」
スピョスピョ鼻を鳴らしながら寝ているグリムの頭をもう一度撫で、白紙の書と1本のペンを持って私は寮から出て行った。
「お待たせしました、学園長。」
「ナマエさん。いいえ、待っていませんよ」
「そりゃどうも」
私がこの世界に初めて降り立った部屋。闇の鏡のある部屋に到着した。
ぼんやり黄緑色に発光する浮いた棺だけが部屋を照らしていた。少し薄気味が悪い。
何も映さぬ闇の鏡の前に座り、白紙の書にペンを走らす。放課後の時間を使ってどういった文を書くかは予め決めていた。頭の中で考えている文を1ページに収まるように文字を連ねる。
「おや?皆さんお揃いで。もう消灯時間は過ぎていますよ」
扉の前で立ってるだろう学園長が喋る。多分、私に投げかけた言葉では無い。バタバタと騒がしい足音はなんとなく聞こえていた。
誰が来たのか。そんなの知ったこっちゃない。私は早くあの世界に戻りたい。この孤独から早く解放されて、彼らと共に過ごすんだ。後もう少しで書き上がる…!
「ねえ何してるの?小エビちゃん」
「ッ、フロイド先輩…?」
「水臭いですねえ、無断で元の世界に帰ろうだなんて。」
「ジェイド先輩…」
私の両隣に座る、双子。
何でこんな所に居るんだ?
「お見送りでもしに来たんですか?」
「んーそのつもりだったんだけど〜無断で帰られるのも嫌だから妨害しに来た」
「は?」
「この本なあに?俺にも見せて」
「あ、ちょ…返して下さい!」
「えーやだ。ふーんだ」
「こらフロイド。勝手に取ってはいけませんよ。全く…。ああそうだナマエさん、フロイドが飽きる間、あちらの方とお話されたらどうでしょう?」
「ッ、後で返してよ。」
妨害って、何しに来たんだこの双子。そもそも、私は学園長だけしか話してない筈だ、何で。何処で話が漏れた?
学園長に問いただそうとして後ろを振り向いた。それぞれの寮長と、その周辺に居る人達。グリム。私が関わった事のある人が顔を見せていた。
「学園長!あんたが話したの!?」
「私何も言ってませんよ!?濡れ衣です!」
生徒が前に出てるせいで、姿の見えない学園長に向かってその場で叫ぶ。と、2人の生徒が前に出て私に訴えた。
「な、なぁナマエ…お前、本当に帰るのかよ?」
「僕たちに言わないだなんて水臭いじゃないか…ほ、本当なのか?」
「帰るよ。私の居る所はここじゃない」
信じられないという表情を浮かべる、エースとデュース。同じ学年で同じクラス。厄介事を持ち込まれた事もあったが、彼らには随分世話になった。
「ナマエ、お前は俺の使用人だろ…!この第二王子である俺が命令してんだ、帰るんじゃねえよ!」
「今は使用人じゃないでしょう。私に命令をしていいのは、ポートマフィアの首領だけ。」
「な、何でッスか?あんたら、すげー仲良かったじゃないッスか。ほら、そこの1年とかもさ、」
「マジフトで俺に勝つって言ってたじゃねえか、まだ約束果たしてねえ!」
レオナとラギーとジャック。くしゃりと表情を歪ませている姿に、少しだけ可哀想だと思った。
「オマエ、オレ様と2人1組で生徒なんだゾ!?勝手に帰るとか許さねーんだゾ!」
「ごめんねグリム、学園長と話合って」
「ふなっ!?酷いんだゾ!ニンゲンの風上にも置けねえんだゾ!」
いつものように叫んでいるが、ボタボタ涙をこぼすグリム。
「ねー小エビちゃん、この本無くなったら小エビちゃん帰れなくなるよね?」
「は、?」
「えいっ」
ビリッ。私が書いたページが根本から破られた。
何で、そんな、待って、白紙の書に危害は加えれない筈、何で。
ふざけんな。ふざけんな。ふざけんな。ふざけんな。ふざけんな。
「あ、あぁ…ァ…」
まだ途中しか書かれていない白紙の書。いつの間にか闇の鏡には黄緑に発光する仮面のような顔が浮かび上がっており、そこに投げ捨てられ、消えてしまった。
この双子、最初から、これを目的に…?
「小エビちゃん顔真っ青だよ大丈夫〜?」
「おやおや、これはいけませんね。モストロ・ラウンジにご招待致しましょう。アズール、宜しいですね?」
「ええ勿論。お茶の用意は済ませてあります。さあ、ナマエさん。戻りましょう?」
唯一、白紙の書だけが頼りだった。その一縷の望みが、無くなってしまった。
帰れない、どうしよう、帰れなくなっちゃった。もうあの人達に会えないの…?
その場に座り込んで、闇の鏡を見つめる。
「か、返して…」
「…」
「かえしてよ…」
「…」
闇の鏡は、何も言わない。
「返して、返して、返してかえしてかえしてカエシテかえしてカエしてかえせかえせカエセ!!!!!!」
「な、何だ!?」
「ジェイド、フロイド!ナマエさんから離れなさい!」
「「!?」」
体の内側から洪水のように溢れてくる力が、周りの物を壊していく。
異能力だ。何故か今この瞬間、今まで使えなかった異能が戻って来た。
制御も出来ないまま。
「ア”ア”ア”ア”ぁああアあア!!!!!!!」
「棺が落ちてくるぞ!」
「ナマエさん落ち着いて!」
周りに浮いてる棺が、彼らの頭上まで移動して落ちる。
「真逆、オーバーブロットしたのか!?」
「ナマエは魔力なんざ持ってねえぞ!?」
「じゃあ一体どうやって、」
魔力を持たない一般人が、力を使ってる事に皆が混乱している。
「痛ッ!?」
「ナイフ…!?こんなの何処から、」
「何だアレ、針…?」
隠していた得物が彼らの体を傷付ける。
「ちょ、リドルくん!」
「分かってるよケイト!首をはねろ!…な、何で」
「首輪はちゃんとはめられているのに、リドルの魔法が効かない!?」
リドルの魔法は相手の魔法を封じる事が出来る。が、あくまで魔法だけだ、異能力まで封印は出来ない。
「い、出でよ!大釜!」
「ふな”っ!?何処に出してるんだゾ!」
「確かにナマエの上に出したのに、何で!?」
「僕のユニーク魔法なら…!」
「いけませんアズール!契約書無しに使用すれば、またオーバーブロット状態になりますよ!?」
「ラギー!ユニーク魔法使え!」
「使ってるッスよ!?けど暴走状態は止まんねーんス!」
止めようと彼らはユニーク魔法を使う。
「ちょ、これやばくないッスか!?」
「急所を狙いに来てる…!」
「ナマエ!やめろ!」
私をどうにか落ち着かせようとするが、しきりに受ける攻撃を住なすので精一杯。
「皆さんここから出て下さい!危険です!」
学園長が部屋の扉を開き、避難誘導をする。
「そうしたくても出来ないんだゾ!」
「背中を向ければ危険です!」
「ナマエ!まじで落ち着けって!お前らしくねーぞ!?」
怒号、焦り、叫び。
「殺してやる!!!!全員殺す!!!コロスころすころす!!!!!!異能力―――」
彼らを見据え、急所に狙いを定めた。
「よく1人で耐えたね
―――異能力、『人間失格』!」
私の背後から聞こえた、馴染みのある声。
トンッ。小さな衝撃が背中全体にぶつかり、視界を奪われ何も見えない。
暖かい。背後から抱きしめてくる男の手で、目隠しをされているのだ。
異能力を無効化出来る彼の異能力によって、内側から溢れる力が急速に落ち着きを取り戻した。
今まで暴走していたせいか反動で体の力が入らず、彼に凭れ掛かる。上を向けば指の間から見える、包帯だらけの男。
「だ、ざ…」
「やっと見つけた。全く、異世界に居るだなんて流石の私も予想付かなかったよ」
「ァ…ざ、…」
「帰ろっか」
「ッ…ん、ぅん、」
「暴走して少し疲れただろう。おやすみ、名前。」
彼の腕の中で、眠りについた。
―――
――
―
…ぃ
お…、ぉ…ろ
おき―――
起きろ、名前!
「ッ!?こ、こは…?」
「はーったく驚かせやがって。全然起きねえから死んだかと思ったぜ」
「ちゅ、うや…?皆は、」
「皆ァ?ここには俺と手前…後クソ太宰しか居ねえだろうが」
誰の事言ってんだ?疑問符を浮かべる中也に、私は言葉を出そうとしたが、それが音として発声される事は無い。
「…誰、だっけ。」
「はァ?」
「いや、なんか…凄い長い夢を見ていた気がする」
「はぁ…寝ぼけんのも大概にしろよ。体の調子は?」
「問題無い」
「なら行くぞ。まだ澁澤を排除出来てねえからな」
「そうだね。行こう」
長い長い夢は、思い出す事も出来ないまま、私は任務を遂行する事に集中した。
そして私は、永遠に彼らを思い出す事は無かった。