「眠い」
只今夜の1時。
私の独り言はラジオのBGMの中に消えた。
今日は深夜まで私が担当だ。
珍しくあの変な奴(矢野)も来ない。
ここにくる客は老人と大学生が殆どだ。深夜に来るとしたら宅飲みのために酒を買いに来た大学生くらいだけど、平日で次の日学校なのにこんな時間に酒を買いにくる人はいないだろう。
やる気ない人かウェイかタフな人以外は....。
ていうか、暇すぎて眠くなって来た。
あんまり深夜はシフト入らないからな。
もう入れないぞ...。
遅くても10時までにしよう
明日は偶然開校記念日で休みだけど、授業は一講多いし、起きれなくて欠席は避けたいし、それに....
それに....なんだっけ
なんだっけ
まあ、いーや。
どうせどうでもいいことなんだから...。
....あ、やばい。
「あのー」
「スー……」
「す い ま せ ん !!!!」
「うわぁっ!!!」
突然の大きな声に心臓がバクバクと音をたてた。
私、寝てた....。
....客入ってきたの全然気づかなかった。しかもお客さんの前で居眠りなんて...!!私を見下ろすその男の人は、同じくらいの年だと思うけどガタイもよくてこわい。
「申し訳ございません!今会計します」
私は慎重に商品のバーコードをスキャンした。こういう慌てている時こそミスしやすいから気をつけなきゃ。
「#みょうじ#さんですね!」
「はい....?」
ガタイのいい彼は私の苗字を確かめるように言った。
何だろう。もしかして寝てたから名前覚えたからなって確認...?
「やっぱり!俺、あなたのこと知ってますよ!」
「え、ええ?ここによく来てるんですか?」
彼は私のことを知ってるらしい。
常連さん?来る人の顔は把握してるつもりなんだけど、私は彼を見たことがない。
「俺…、ヤノジュンの友達の竹之内です!法学部っス。#みょうじ#さんのことあいつから聞いてたんすよ」
ヤノジュン....、て
あいつか。
いっつもここにくる悪人ヅラの!!
そのお友達なのか、彼は。
でもあいつとは正反対に愛想の良さそうな人だ。
私のセンサーがそう反応してる。
「ぶ、文学部英米文学選考の#みょうじ##なまえ#です」
「あぁ、ヤノジュンと学科一緒なんですね」
「…はい」
アンチキショーの名前を聞いた瞬間
声がワントーン低くなった私に
彼は苦笑いした。
「ホントに仲悪いんですね」
どうやら承知なようだ。
ハッキリと仲が悪いと言われた。
「いっつもこんな時間に働いてるんですか?」
「いえ、今日はたまたまです。シフト代わって〜と言われたので。でもここに来るお客さん大体お年寄りなので夜は暇でのびのびしてるんですよね」
ははは、と私は愛想笑いをする。
「そうなんですか。でも大学次の日ある時とか眠くないですか?」
「そうですね。明日は休みだからまだいいですが....て、そっか。何でこんな時間に大学生が来るんだろうと思いましたが、あなたも美丞大なんですね」
「さっき言いましたよ!てか、タメでいいっすよ、同い年なんで」
「わかった。じゃあよろしくね、竹之内君」
「うん!」
このあとも私は竹之内君と他愛ない会話をした。
私の予想通り
彼はすごくいい人だった。
「あ、すいません。俺今ヤノジュンの家で呑んでて、ババ抜き負けて俺が新しい飲み物買うの頼まれたんすよ。だからそろそろ戻りますね」
人使うとかサイテーだなあの男。
つか家近いのか。
「話してくれてありがとうございました。楽しかったです」
「いえいえこちらこそ。敬語抜けないね」
「あ、ごめん」
謝ると、竹之内君が笑った。
「いーよ。またね」
「うん!」
友達が増えました。