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「たかだか島国の、チンピラよりかは貪欲だな。だがその程度か。
へい、ミーラチカ。僕はやっぱりウィルソンのカスタムが欲しいね、96の」
「あっそう」
「つれないねぇ。男はそれくらい派手でなきゃ」
それからメルクスはにたにたと笑い、譲二を眺め「どうする?」と振ってくる。
「君、いらないや」
「…は?」
「碌なもんでもないだろうし」
メルクスはアタッシュケースに詰められた、150万円が入った封筒を眺め、その場に投げるように置く。
「邪魔なセドリックは消えたが」
「え、ちょ、」
「さてミーラチカ。どうだい?但し買い取る気がないんだ僕には」
セルを見れば壁に凭れ、何も言わずに腕を組んで譲二を見下ろしている。
「いらないかな?」と微笑んだメルクスにしろセルにしろ、譲二の中で漸く状況が組み立てられていく。
このパラフィリアは恐らく自分を空薬莢としか思っていない、ならばセルはどうかと言えば自分をここへ連れ去った張本人だ。
どこからどう、誰が図って読んだのかまでが定かでないが確かなことは、自分は執着の終着点として、今このハンドガンの的になろうとしていること。
譲二はトラックの中での核心を思い出した。
「…ふざけんなよ、」
先程粗末に返された拳銃に手が届いた。
スライドを引くまでは勢い任せでしかない。
譲二が見上げた碧眼を見下ろして銃口を下げるもメルクスは特に驚きもしなかった。
「…あんたとセドリックの歪み合いを俺は知らないんだよ、それは商談でもなんでもないじゃないかミスター・メルクス」
「…で?」
「スケープゴートになる謂れはないんだよこのっ…Son of a bitch!」
せめてこのサノバビッチの足元を撃ってやろうという意識はあったのだが、勢い任せ、いざ引き金を引けば腕に負荷が掛かり「ふごっ!」と舌を噛み反動、ソファーが邪魔をし尻餅をついてしまった。
拳銃は硝煙、一片の羽毛が視界に落ち危機感が迫る。だが落ちた影にはメルクスがテーブルを間にし、ラフに拳銃を向け立っている。
外した。この距離で外した。
だが「ふっはっははは!」と、女の笑い声がして状況、空気が一変したのだった。
「さらに言い忘れてたがあたしはそいつをそういやぁ、その猿に売ったんだったよクソガキ」
それからセルは譲二ににやりと笑ったのだった。
「取引先を間違えたようだジャパニーズ。だがてめぇの紙幣は使えねぇ。
なぁクソパラフィリア、お前、それいらねぇんだろ?交渉不成立だ。そもそもてめぇは警察でも軍人でもない。端から、ガバメントで我慢しな」
「…田舎もんは口を開けば美女でも土臭いな、このロシア風情め」
ロシア人だったのか。
深い笑みを浮かべたセルはメルクスに親指を下げ「Go to hell.」と言い、踵を返してしまった。
「だ、ダメだよ、ブライト…っ!」と堪えた笑いを漏らしたミッキーと、アタッシュケースを指し、それから人差し指をくいくい、とやるカオルに、どうしたもんかと考えつつも、譲二はアタッシュケースを片付けついていくことにする。
メルクスは不服そう、いや、不貞腐れているように見えた。
「まさか撃っちゃうなんてね、」
追い付けばミッキーは譲二の肩を掴みながら、「どーしたもんかな」とセルを見るのだが「別に」と、セルはまたクールだった。
「自己紹介だね、俺マイケル」
「えっと状況がわからないんですけど、」
「こっちセルリア」
「せるりあ」
「こっちカオル」
進められていく話題に「…Jouzi-Yushima」と片言になる。
それから4人はメルクスの屋敷を出た。
屋敷の前に、穴の開いたトラックが停まっていた。
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