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停車し、シャッターが開いた先はいかにもな豪邸だった。
「やっぱり撃ったなセル」
と、シャッターに開いた穴を見て、やれやれと言うミッキーにセルは構わず「ニュースは」と訪ねる。
「ああ予定通り。警察もろともドカーンよ」
「流石だなあの根倉パラフィリア野郎」
一体なんのことかは不明だが、とにかく譲二は「早くしろ」と荷台から降ろされる。
そのタイミングで自動に屋敷の門が開いたのだから、その屋敷に入るのだが譲二には全く覚えはないことで。
「奥へ」と案内された部屋は予想通り、金持ちが住む、無駄に広い部屋。
使いのメイドが扉を開けて「メルクス様、お連れしました」と言う先にいたのは、ソファーでくつろぐ白人で金髪の、若い、20代ぐらいの男だった。
「やぁ、君たちが“クラッシュ”かい。初めまして。“グリーンリベラルパーティ”のメルクス・ニコルズだ」
紹介をしつつ真っ先にメルクスはセルにハンドを求めるのだが、セルは腕を組んだままだった。
「…クラッシュのブラッシング・ブライトだ。あんたに言われた通り、セドリック・サムウェルからケースを強奪してきた」
ソファの前で流れていた、何十インチかもわからない大きな日本製のテレビをセルがちらりと眺める。
メルクスはそれを見ては「はは、そうそう、」と途端に子供のような笑顔、はしゃぎで言う。
…雑踏やら何やら、爆炎が上がっていて…忙しなく画面が動く、動いてちらちら映る門。字幕に「Irish Embassy explosion」が見えた。
それは先程までいた場所じゃないか。
「見事にすっ飛んだみたいだよ。へい、話したのは君かな?」
メルクスが楽しそうに言う先はミッキーだった。
「お気に召していただけたようでなによりです、ミスター・メルクス。あんなに見事にみーんなすっ飛んだところを見ると、警察介入の頃合いでしょうか」
「そうそう!」
「どうにもやりますねぇ、我々としては有り難いが、貴方は大丈夫なんです?テロでしょ?これ」
ミッキーの表情は確かににこやかだが、どうにも含みがありそうに捉えるのは日本人情緒なのだろうか、と譲二はまた遠くなりそうな気がした。
アイリッシュ大使館爆破。
当たり前に起きているような素振りが信じられない。ミッキーも言う通りいくらアメリカとはいえテロではないか。
「バレないんでしょ?それだけ仕事が早いと聞いたよ僕はね」
「確かに、誰かにつけられることもなく立ち去れましたね。それのみでよろしかったのではないかと申しました」
「どうせなら“HANABI”はみたいでしょ?
で?僕は確か、雇ったのは3人だったんだけど、君が持っているのがセドリック氏の遺品かな?」
話は急速にこちらへ来た。
「ジャパニーズがどうしたというんだい?」と振られることに我に返った。
「え、」
「ミスター・メルクス。この日本人はセドリックの取引相手だ」
「へぇ、セドリックは安価な男だねぇ。いくらで?」
「ふ…、4,523.68 $」
「へぇ、商売上手だね。君の事務所なんてゴミみたいだったけど」
どうやらこちらを知っている…。
つまらなそうにメルクスはソファを促し、アタッシュケースを置け、とテーブルを差した。
言われる通りにアタッシュケースを広げればメルクスは「ふぅん」と、先程の拳銃を手に取って眺める。
「あの男はバカだねぇ、底無しの。
で、ジャパニーズくん。君は何故これをファッキンアイリッシュから買い取ろうとしたんだい」
「…マリファナはこちらの方が安価なので」
「マリファナ?この小麦粉でアレと取引しようとしたのかい」
「はい」
「ははっ、はっはは!」
途端にメルクスは腹を抱えて笑いだす。徐々に気の狂ったように笑いが深まっていく。
譲二が唖然としている中「でもねぇ、」と、アタッシュケースから拳銃を取り、譲二に銃口を向けた。
「僕ならあんな、手榴弾でもすっ飛びそうな島国、3,619.99 $ で許すけどプラス1,357.43 $ 募金してもらおうかなぁ、ねぇどうだい?優しくないよねぇセドリックって!ははっ、君のボスに繋いでよジャパニーズくん!」
カシャッとスライドを引いたメルクスは「ん?」と一瞬動作を止めては「ん?」とまた言う。
「…言い忘れたがメルクス、そいつぁnewタイプだ。いくらか軽いだろうよ」
「…なるほどね。
挨拶代わりにしては重ったるく、」
セルが言う方へ余所見をしながらメルクスが銃を撃ってくるのだから、いくら真横、つまり自分には当たらないとはいえ恐怖だった。
撃った先を見つめるのか、譲二を見つめるのか定かでなくメルクスは「指の滑りが良いものだ」と呟いた。
だがメルクスはしょんぼりと下を向き銃をぽいっとケースの、マリファナの上に置く。
何事なんだと成り行きを見ていれば、オーバーリアクションに手をあげ、「ま、いーや」と興味を失ったようだった。
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