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 海軍錬成だなんて。
 そんなもの、戦でもない限りなんの役にも立たないのだが。ましてや、今の日本にそれが理解出来るか甚だ疑問だ。

「…あんたが言うと本当になるのだから気が気じゃないな。この国は本当に海外とやり合うつもりか」
「それには軍事力が足りないな。無知とは愚かなもんで。バカとハサミは使いようだよ。
 で、坊さん。金の話をしようじゃないか。俺が長崎から持ってきた|硝石《しょうせき》はどうだい?」
「あぁ、いやわからんけども」
「まぁそうだな」

 和尚は「ちょっと待ってろ」と一度部屋に引っ込んでは、またすぐに戻り袖口から袋を出した。

 藤嶋は西洋の鉄砲を持っている。

「理論上では確かに、前回よりも火力が増すはず…なんだよな?」
「…こいつで試して俺燃えねぇかな」
「燃えるかもしれないなぁ…。あんたが言うと現実になるからなぁ…」

 だが藤嶋は存外楽しそうにリボルバーの弾倉を明け、一つ、坊主が作った黒色火薬を詰める。

「あー流石に怖いな立ってやろ〜」
「ここでやるのかお前」
「長崎のライフルは長かったからなぁ…これ本当に大丈夫かなぁ…。これ硝煙が紫でキレーなんだってよ」
「人の話を聞」

 バァン。
 四の五の言う間に撃ってしまった。
 「うわっ、」と藤嶋は反動で倒れストンとまた縁側に尻餅をつく。
 同時に庭に生えていた細めの松が一本、撃ち抜かれて倒れてしまった。

「げっ、」
「おい…、」

 燃える!と和尚は駆けていく。
 「はっは、すげぇわこれ俺よく死ななかったわ舌噛むかと思った」と言う楽しそうな声。
 松は燃えてはいないが銃弾は相当デカかった。

「もーちょっと少ないヤツも作れる?坊さん。これは火縄銃用だとして」
「いや待て待て待て、お前これ、こんなんばら蒔いたら」

 日本中が燃えるじゃないか。

「これ配合どんなもんよ?物価も高いし、ま、それすらふっ飛んじまえば関係ないけどね」
「4割くらいだけどいまなんて言うたヤクザ風情」
「4かぁ。3。3割でやったらいいかな」
「人の話を聞けよ、こればら蒔いたら」
「眠いなぁ坊さんの説法。
 物価高いし良いだろ?これがあれば情勢は回る。バカ共が騒いで潰し合えば日本は弱ったところを海外に爆破されて終わり。
 だがバカばかりでもない。潰れた小国が団結して一気に腑抜けが一掃され、不平等条約もふっ飛んで商売繁盛
、と…」

 背筋が凍る。
 この男自分が何を言っているかわかっているんだろうか。博打よりも酷い。

「お前まだ役人を捨てていないのか…?」
「は?何言ってんだ?坊さんは平和でいいなぁ。そんなもんより安定よ安定。金がなけりゃ始まらねぇ」

 …それだけのために焼き払おうと言うのかこの男。

「…まぁ死んだ友人の受け売りだ、日本はもう遅すぎた、ここで立ちあがれなけりゃ武器庫にでもなって誤爆し終わりなんだよ、坊さん。あぁ、そしたら桶屋が儲かるじゃねぇか、なぁ?」
「…気が狂ってるな」
「来るとこまで来て、さぁ最後はどうなるか…。
 まずはそうだな、爆破しても良い、海辺なんかに持って行こうか。丁度海なら動きやすい」

 至って淡々と語るのだから恐ろしい。この男、藤嶋宮治の破壊心はかつて、京を半壊させただけでは留まらなかったようだ。

 地獄にも神はいる。

 何がそうもこの男を動かすのか。
 いや、この外道には何もない。
 何も持たない気紛れ以上も以下もなく、神よりも人の気がない男。

 くわばら、くわばら。
 人の気も知れず、神の気も知れずと念仏を、唱えるばかり。流れとは抗えないものかと芯を捉えたような気がした。

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