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「そんなに盛り上がったのねお前ら」
「あんたと違ってね。
ハイハイ。後はうーん…」
ミソラさんはレジの上にある、ウサギとか、森とかのファンタジックな時計を見上げる。12時20分くらいだった。
「うーん。私のお昼の時間も頂戴。それで…。
まぁ3時くらいかな。その頃にまた来て」
「昼飯なら一緒にいくか?」
「嫌だ。私今日はなんとなく隣のカツ丼食べたいから。てか、食べながら印刷とかするから」
「…あっそう。
その間佐奈斗、俺らも飯食うか」
「あ、はい」
「うーん、したら買い物でも行くか」
ミソラさんが奥に向かう際、ふと五十嵐の肩をバシンと叩き、「珍しく良い子じゃん」と、いたずらっ子のように笑って言った。
「看板クローズにしといてね五十嵐。3時に待ってるから」
ふと五十嵐は僕を見て、「お前気に入られたらしいな、あの独身女に」と、なんだか珍妙な顔をしている。
「はぁ、まぁ、」
それから五十嵐は、店の前に立て掛けてあった、黒板のような看板の裏面を自動ドアの中にしまった。それは一生ドアが開けっぱになる気がするが、「何食うか」と、構った様子もなく僕に訪ねるのだった。
僕たちはそれから近くのデパートに向かい、なんだか高そうなイタリアンのチェーン店に入った。
僕としてはフードコートの、消化が良さそうなうどんとかを食べたかったんだけど、結局和風パスタ。
これはこれで、最近食べてない物で新鮮な気持ちにはなれた。けれど五十嵐はコーヒーとナポリタン。それはフードコートでもよかった気がするが、「やっぱ違うんだよ」と満足そうに食べていた。
1皿に時間を掛けて食べた僕を待っていてくれたが、1皿800円のナポリタンと1300円の和風パスタにそれほど気も掛けずに会計をして真っ先に向かった先は喫煙所。
僕は外で立って待って。3分くらいで出てきた五十嵐はタバコ臭い。だが本当に満足そうだった。
しかし男二人の買い物は楽しいか、そんなことより彼はぱっぱと僕の日用品、主に洋服を揃えていく。
基本的に僕は五十嵐に口出しはしなかったが、流石に花柄のシャツとか、何かのキャラもののコラボTシャツとか、よくわからない色のパンツに関しては意義を申し立てた。
結局「地味だなー」という結果だったらしいが、彼は大型のリーズナブルな洋服屋で3万円、高そうなブランドでも3万円くらいを平気で僕に買い与えたのだった。
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