2
「注意点をこちらが押さえれば話は済むんですが、ここでもそれは明確化出来ていなくてその特定は難しい、からまだ入院させたい。それは別にいいと思いますが病の話ばかり聞いていると……、例えば双極性障害なんて安定剤でどうにかするわけでしょ?でも副作用だってある。から、どちらにいてもあいつには大差なくて、まぁ、確かに専門家監修が良いんでしょうがなら通院でも構いませんね?」
「それはですから、いいんですけれどもリスクは大きいですよと言うお話ですよ」
「まぁ、」
何故こちらを煽るのか。
「警察とか……探偵事務所だとかを使った割には穏やかな対処で助かりますけどね。かなり高圧的だったんで身構えましたよ正直」
「それはその、結局は個人の人権等もありますし探偵事務所に居場所をお願いするしか」
「あ、そうなんですね。警察云々ってのは所謂事故の件ですか」
「はい、でも特定には」
「いやまぁいいんですよそこは」
俺がそう言い切ると、対応に困ったように主治医の女が口を閉ざした。
確かにちょっと意地が悪い事を言ったかもしれないが。
「……あの、では五十嵐さんは一体何故こちらに」
「いや、呼んだのはそっちでしたよ。
まぁ、そっか、俺は呼ばれてませんでしたね。けど、いま説明はされたわけだし、うーんと、病院としては入院させたいんですよね?どうしても。引き渡せと言う事かなと思ったんですが」
「そうではなく、ですからいいんですよ別に」
別に。
「別にいいのなら他当たってもいいですよね。本人も暴れるほど嫌みたいだしって、」
「あ、だから」
「あーすみません言葉の選択を間違えました。
さっき長々聞いたやつ、本人は抑制できないところで何故嫌なのかわからないかもしれませんね。今後もいつどうなるかわからないんですね、はぁい。
いや、単純に俺はね、セカンドオピニオンと言われる時代だし。ここでわからないまま色々病名がぶら下がって……でね?素人なんでわかりませんが本人にこれ、出口ってのが果たしてあるのかなって」
「貴方そんなに何か、理由がおありですか?どうしてもとこちらを言うのであれば」
「そうですね、そっくり返します。後は本人次第ですがあんたらの見立てではそれが正常な判断じゃなくなるかもしれないんですね?」
「……はい、そうです」
「じゃぁ待つしかないですね、落ち着くのを」
言って間は出来たが俯いた主治医が「そりゃあ本当は…」と続ける。
「自然でと言いますか、本人が一番自然体でいて治療出来る方がいいですよ、そこはご理解して頂きたく」
「そうですね、だから、待ちましょうって。俺への手間ならじゃあなんかあったら相談すりゃぁいいんでしょ。聞いてりゃリラックスでもしてれば大丈夫なんでしょ、基本姿勢は。
しかしあいつは何故暴れるほどなのか……抑制生活が嫌すぎた、程度の話ならまだ、理解能力がいま低下していて…となりますけど。全然なかったんで、俺ん家では。まぁちょっとはありましたがあんなに人格変わるんですね、人って」
「……普段は、そんなに困らなかったんですか!?」
どうやら漸く、最近のあいつの日常に食いついてきたようだ。さっきもさらっと言ったんだけどなぁ。
あいつがどうかというよりやはりなんか……そう、マウスのようだな、全く。
「別に困ってないですよ。まぁ薬がなくなったからどうたら、てのは言ってましたけどちなみにこれは依存症じゃないんですか?昔聞いたことがありますよ、薬増やす医者は碌なもんじゃないと」
「なっ、」
「いやまぁいまはそこはいいとして、俺わかんないし。
あいつはなんなら、自分が出てたAV見たって、感情の沈みかな?はあれど困ってませんよ」
「……は!?なんですかそれっ!」
「うーん、あんまよくねぇってのはわかりました」
「……信じられない」
軽蔑したような目で見られたのでははっ、どうやらサナトの進歩への「信じられない」ではないようだな、この反応。あんなものを、てとこか?
んーまぁあんたのそれも職業に対してだかなんだか知らんが差別的ですよね、というのは面倒臭くなりそうだから言わないでおく。
「……五十嵐さん、画家さんでしたよね」
「はい」
「神月さんが持ってたやつ。
言ってしまえばそれもそれで理想や夢を見がちになってしまい、ましてその夢と生活を」
「あー、大丈夫。一緒に生活しちゃったんで見事に人を「ゴキブリ」のような扱いしてますから、あいつ」
「………そうなんです?」
「ええ残念なことに」
「まぁ良いんですけどあとは収入とか…」
「んー大丈夫です稼いでますから」
見栄なような違うような。あれ一人分くらい問題ないのは事実だし。
どうやら非常に信用は失ったらしい。不信な奴、というのがありありと間や視線から伝わってくる。
きっとこの後ナースステーションで「あの人イケメンでセンスいいけど超クズ。きっと結婚できないタイプ」とか言われるんだろうなこれ。うるせぇわ、と自分の空想に悪態を吐く。くらい急に暇になってしまった。
いや、今が特別怒濤だっただけだ、多分。“特別”なことばかりをつらつらつらつらと、過剰なマスコミかお前らは。
- 47 -
*前次#
ページ: