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 はっと起きた。
 天井は朝の光と、付けっぱなしになってしまっていた電気スタンドの光に、淡さを出している。

 ガン勃ちしていた。あの日の、電気ショックのような夜に。

 楓は丸まったまま寝ていた。
 よかった、君はまだここにいる。
 だけど、寝ているね。

「楓、」

 起きちゃうかもしれないなと思いつつも寝ぼけには耐えられない。ぎゅっと抱き締め、ついでに股間は足の間に挟んでちょっと腰を動かした。ああ少しずつ上を目指せば楓の性器に当たる。

 昨夜のあれはなかったかのように、けれども涙をちゃんと拭いてあげてなかったようだ、少し残ってるそれすら流星のように思えてしまうのだから俺は相当脳が溶けてしまっているらしい。

 舐め取ったらしょっぱかった。楓、君は生きているんだね。

 寝顔に、あの日それから突然情緒不安定になった楓が部屋から飛び出していき、その不穏さに追いかけてしまった自分を思い出した。

 付き纏う、「あぁあぁ!」と、橋を乗り越えてしまった楓を引き上げたときの真っ青な顔が。

 その時の肺炎がまさかここまでじわりと蝕むことになると、予想なんて出来る訳がないだろう。

 苦しかったのだと、病室で言った楓は泣いていた。

 本来ならこんなやつと、思うかもしれないが仕方がない。
 だって、死にたいと思った誰かに痛みを感じないわけがないだろう。あのラッシュはその為に使う気だったのかもしれない、だってあの時点で効いていたのだから。

 そんな悲しさが溶け込んでしまったなら、仕方がないだろう。

「楓…、」

 抱き締める。あぁ、どうしてあの日の冷たさばかりがこの手は覚えているのだろうか。死にたくてセックスするなんてこいつはバカなんじゃねぇかと、だけど薄い身体に、時が刻まれた。こいつは本当はそんなにバカではないんだ。

 濁ったセンチメンタル、たまにこうなる日くらいある。

 息が濁ったせいか、楓が俺の寝巻きを掴み、背中を緩く抱き締めたのがわかった。

「まぁさ?」

 と、朝に溶けている。

「…楓、おはよう」
「おはよう…。
 いつから、泣いてるの?」
「えぇ…?」

 ふいと、俺を見上げた楓の顔は切なくも、綺麗な目をして朝にぼやけていた。

「…起こしていーからって…」
「泣いてないよ」
「…そう?」
「うん、そう」
「ん…」

 よかったのだろうか。

 胸あたりに額を当て、それからすーっと寝てしまった楓に「なんだよぅ…」と妙に、暖かさが流れてゆく。

 もう、頭を撫でて「よしよし…」とするしかない。

 もしかして、楓。
 あの日がフラッシュバックしちゃったりしてないかな。たまにあるんだよな、それで過呼吸になっちゃうの。

 ふらっと、記憶は浮いてくるからなぁ…。そう思うと「あのタコ野郎」がまた廻ってきそうで「ふー…、ふー…」と、落ち着けるしか、なかった。

 甘くも、泥のような、その溶け合った懐古に。俺はまだまだ大人になれなかった。

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