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 個室に入った瞬間、楓は縺れるようにわりと無理矢理俺を押し倒しては「悪いけどさぁ」と言い放つ。

「初めての、子供に挿れてやるほど、おれ、優しくないんっ、」
「…そうだね、俺も自信ない」
「じゃぁなんれ来たの」
「…うーん」

 わからない。
 わからないけど急に視界が暗くなって、顔が物凄く近い。酒臭いが何より、息が熱くて心配になった。

「からかってんの?」

 ああ、そうか。

「…そういうんじゃ、ない」
「確かに。ふふっ、そうだぉね、」

 股間を触られている。
 確かにそうやって「触ってて?」と冷たい目で首を傾げて俺の手を乳首に持っていくのとか、キツい股間はまごまごしながら出してくれるのとか。

 なにより、酒臭くて熱い唇、舌が俺の口内を犯し尽くしてやると言わんばかりに絡まったり、出たり入ったりするのが、変だなぁ、甘い気がする。麻薬のように頭が白く吹っ飛んでいく、これは歴代の彼女たちにはなかった。

 ならば返してやらねばと、楓の股間を撫でたら「んっ、」と舌が逃げてしまったのに独占欲が沸いた。
 気付いた、起き上がって頭抱えてキスしていて、互いに息がわからなくなったときに目が合う。

 漸く甘い目をして薄笑いを浮かべた楓はエロかった。首筋に噛み付くように食むくらい。
 やはり、筋があるもんだ、そう考えたとき、その首筋すら逃げ、ふいに下へ向き、性器をなんの躊躇いもなく食んでくれたのに、少しだけ現実に戻ってきたけど。

 筋やら、もうどこだかわからない。あの甘ったるい舌が性器を溶かしてしまうように熱く這っている。甘い場所がめちゃくちゃ刺激的で快感が直に脳を奪ったけど。

 打ち砕かれそうな自制心が、その小顔の髪や、首筋を撫でるのに、キョトンとした顔で急に見上げてきたのだった。

「…上手くてビビった」
「…まぁ…」
「…俺、もしかしてあの入れ墨野郎と間接フェラチオだったか?」
「…へ?」
「へ?じゃねぇよバカ野郎」

 あぁ、腹立つな。

 掴まれていた股間をしごきたいなと腰を動かしたら、やっぱりイノセントな目でそれを見つめているのが不思議でならなかった。
 と言うか笑いそうになってしまった、と言うか沸々と「ふははっ…、」萎えるくらい笑ってしまった。

「え?なに?」
「いやぁなんかシュールだなと。わりと美人な同性が、俺のちんこ握ってめっちゃキョトンとしてるって、なんか…っ、」
「…だって、」
「俺も今自分で「何してんだろうな」って思いながらも、あんたが何考えてんだろう、なんでしてくれてんだろ、ちゃんと意識とかあんのかなって…なんかさ…」

 ドロッと、胸に何かが流れた気がした。
 俺は楓の耳元を撫で肩を露にし、それだけで、痛々しいほど細いな、だとか。簡単に言えば相当酔ってしまっていた。

「…無理しなくていいや、だなんてな…変だけど。なんか自然にセックスしたら気持ち良さそうだなとか思ったよ。普通の熱い息遣いで」
「…お前はそうかもしんないけど」
「まーさ。真麻まあさ勝成よしなり
「…普通名乗らないし」
「じゃぁ名前教えて」
「は?」
「普通じゃなくていいから教えて」
「…なんか、言ってること」
「おかしいよね。俺もそう思うけどもっと頂戴」

 楓は俯いて。
 俯いて。

 少し間がありまごまごしながら「しなみかえで」と、名乗った。

「どうせ会わないからあげる」

 そう言って突然、わりと急速にしごかれて。

 跨がってきたその中が、ビックリするほど狭くて、柔らかくはないけど、だからこそ捕まえられ、溶かされるほどに熱い。

 焼かれる、こいつに。そしたら混ざって、どうなる?吸収されてしまうのかもしれない。

 背中に手を添え、腰も支え。ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃと混じっていくそれがもう、リビドーを越えてもう、なんだかわからなかった。

 だけど泣くように、静かで苦しそうに熱い息を掛ける楓に、そうか、やっぱ泣きたかったんじゃないか?不思議と優しさが頭を白くしていく気がした。痛くないのかなぁ、緩くしようかなぁ。もう少しぐちゃぐちゃにされたいのかなぁ。

「痛くない?」
「大丈夫?」
「苦しくない?」

 俺はわりと、狭くて苦しいけどね。

 そう勝手に思ったら堪らなくなってしまったのだった。

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