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 誰も、人ばかり考えるようで、自分を中心から外せないで攻撃ばかりしている。

 バランスを崩せば生き物はどの空間でも生きていけないと、そんな簡単が無に等しくなっている。
 それは気が狂う前段階だと、踏み留まるしかない。

「…ま、ずは…。ご飯を食べようよ」

 俯いたソラがもじもじと言う。
 それに「…はは、」と、全部がくだらなくてどうでもよくなった。
 一種の思考停止だと自覚したところで「悪いけど、寝かせてくれないかな」と雨川は言った。

「明日から、泊まり込みでさ、新しい、星を…」

 パタンと意識は閉じたようだ。
 雨川は本当に突然寝てしまった。いや、意識を遮断してしまったのかもしれない。

 顔を見合わせたソラと南沢。
 ソラは笑って「疲れちゃったんだ…」と優しく強かった。

「…ソラ」
「ナツエはマフユちゃん、側にいて。だから来たんでしょ?」
「…うん。なぁソラ」
「ん?」
「俺は死んだ方がいいかな、なんて…。君達に何をすればいいか」
「怒るよ」

 やはり、子供の一言はそれだけでぐさっと刺さった。

「何があっても言わないで」

 あぁ、そうか。
 脱力した。だから急に素直に、「ごめん、そしてありがとう…」と言葉が出ていった。

 ソラはそれには何も言わないでキッチンに立つのだから、本当に丈夫だと感じる。

 南沢自身はベットに座り、「真冬」と呟いて額を撫でてやるのが精一杯なのに。

「ホントにスケベはしないでね」

 と言ったソラの意味に、重症化の手前まではいってしまっていたと再確認した。
 冷えピタが落ちていることにさえ気が付く。

 過去は繰り返すがそれは同じではない、だから自分はそうやって全て確かめたくて、傷付けて来たんだろうと昔を思い出した。兄は確かに孤独だった。

 血は争えない。本能や記憶はなくても自然現象は起きてしまう。
 まだ曲げてはいなかったが相当踏みつけた。けど曲がっていないのだから素直になるしかない。

「俺は全部後悔してるから、新しく何かを探したいんだよ」

 遅かったとしても。
 探求をするから自分がある、それは執着として凝り固まり、不自然だ。

 シンプルに生きるのは難しいけどスッキリした。これから再び兄を殺しにいけばいい。
 この、満足いかない心の穴はブラックホールのようなんだね、多分。

 撫でている額が湿って愛しい。自分を、捨てたくなるほどに。

 一人、雨川の寝室で南沢は考えた。

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