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「出会ったのは3年くらい前だった。何の事件かは言えねぇがわりと大きなヤマを抱えててね。
 5人体勢だったんだが、一人、とんでもないのがサポートで来ると話題になってね。なんでもそいつは大体が無所属。フリーで、どんな現場でもふらっと現れては必ず片付けてしまうよくわからんヤツなんだと。
 ただ評判はよくないもんで、上司と大体上手くいかないだとかタラシだとか、だが物凄く顔が良いらしいだとか」

今のところ大体の噂は間違っていない。

「だがそんなヤツのところには大体、汚れ仕事だったり雑用だったりが舞い込んでくるのが当たり前だよな。上からは敬遠されてんだからよ。
 だからこの案件は正直終わったと思った。
 そいつが来た日、どこのお偉いさんだかわかんねぇちっさいおっさんと一緒に来た。
 開口一番にそいつがおっさんに言ったのは、『今回限りですよね』だった。
 もうそれでメンバーと最初に確執が出来た。メンバーも、『あいつとは組みたくない』だのなんだの。
 しかもなんだか知らんがそいつは大体部署にいない。どれだけメンバーのことが嫌いなんだよと反感も買っていた。
 しかしどうもデスクには、こっちが集めらんないような、結構えぐい内容のレポート、最早スキャンダルって言ったら良いのか?そんなのが毎朝あたしのデスクに置いてあるんだよ。誰が置いてってるかわからんが捜査はそいつが来てから捗ったんだ。
 そしてある日だ。
 そいつのことを一番警戒していたメンバーの裏切りが発覚した。そのメンバーが、そいつが来るずっと前から、外部に捜査情報を売っぱらって金儲けしてたんだ。その捜査資料をぽんっとデスクに置いたのが、警戒されていた、つまりは潤だった。
 途端に残されたメンバーは潤を称えた。だが、潤はそれを機会に部署から離れた。
間もなくしてその不祥事が祟り、部署は解散した。そしてあたしには次の仕事が舞い込んだ。
 あたしは潤を拾った。一緒に来てくれと。潤は最初は渋っていた。だが、あたしは最初から潤を買っていたのを潤は知っていたようで、最終的にはついてきてくれた。
 あの頃を謝罪するといつも潤は言う。『別にあんたは悪くない。むしろぶっ壊した俺が悪い』と。
 潤が集めた資料に対してあたしが言及したときも言っていたのは、『別に汚れ仕事なんかじゃないでしょ。でも、怒ってくれたのは初めてだった』って。
 潤は言ってた。
『人とセックスするときって生きてるときしか出来ないから、俺は嫌いじゃないんだ。こうしないと生きてるって思えないくらいだし。相手がどんなクソ野郎だろうがクソビッチだろうが。だからそんなに怒んなよ』ってさ。本質を見るんだと、人の」

あれから潤はそんなことをしていたのか。
だから、潤に白羽の矢が立った訳か。

「面白いから、あとは、なんとなく影を感じてな。忘れられなくて一緒に居たんだが、ある日突然、そう…なんか警察庁テロあたりだったかな。いきなり行方をくらませやがったんだよ」

 切なそうに語るアキコはなんだか、姉のような、そんな風に見えた。

「なんだったんだろうな。何かあったんだろう。
 でも今回、顔が見れて少しよかった。3万なんてどうでもいい。あいつはたまに顔見てやらんと、とんでもなく遠くに一人でいやがるんだ」

あぁ、こいつは多分、お人好しというか、器用貧乏というか。だが…。

「あんた、ダメな女だな」
「…まぁよく言われるが改めて言われるとムカつくな」
「んなんだから部署一個潰すんだろうな」
「なんか…」

 明らかにアキコの表情はイライラしたものに変わった。だからこそ、言ってやろうじゃないか。

「騙されやすいって言われないか?」
「るせぇな、あんたに何が」
「わからん。だがひとつわかるのは良いヤツであることは確かだ」
「は…?」

 そう俺が言えば、ポカンとした表情でアキコは俺を見る。

「バカ正直。嫌いじゃねぇが、そうだなぁ、向いてないよね。潤があんたの元を去ったのもわかる気がする。
 多分息が詰まったんだろうな。あんたといて。
 けどまぁ、また会えたというのはそーゆーことだ。よかったじゃないか。気持ちはわからんでもないがひとつ言うなら、潤の嘘を見破れないからあんたはお人好しで器用貧乏止まりなんだよ。あんたは姉にも上司にも仲間にもなれない」
「…嘘?」
「俺があいつと何年の付き合いだと思ってんだ。
 あいつのことはよく知らない。だがあいつは、そう易々と人を褒めたりしないんだよ。
 あんたは人を信じすぎだ。そんなんでサイパンなんて、海外なんて行ったら3日で財産さよなら、一週間後には身ぐるみ剥がされて死んでるぞ。ましてや女なんだからな。まぁ、幸せは祈っとくよ」

普通のやつはそれが多分、当たり前なんだろう。そう、普通のやつなら。

 俺は席を立って荷物を持った。

あんたは人を信用しすぎだ。
だから部署なんかを潰すんだ。俺に教えてしまったことで、また失敗に終わるんだ。

「…行くのかい」
「あぁ。それがあんたの狙いで願いだろ。
あいつとはな、生死の約束をしているんだ。あんたみたいに安っぽい小競り合いをして殺されるにはあいつは早いんだよ、まだ一発ぶん殴ってねぇし」
「…参ったな。しょうもねぇ…第一アテなんて」
「ねぇよ。あんたのせいでな。だが俺も単細胞だがバカじゃない。
 教えてやるよ。あいつは、ただの病み症の引きこもりだ。そして案外単純でわかりやすいんだよ」

 それだけ言ってその場を去った。ここにいるのもくだらない。

ただいつか会えたら謝りに行ってやるよ、気が向いたら二人で。

さて、それにはまずどうしたもんか。

 ケータイ画面を操作した。今更宛にはならないかもしれないけど。

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