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その日は現場検証をして終了。
最終的に銃弾の痕や血痕、その他損傷が見られ、結局明日の会合は別所にという結論になり、捜査自体も犯人逮捕という形で強引に終幕しようとしていた。
ほぼ徹夜状態で現場検証をし、夜中に猪越さんと一度抜けてホテルの様子を見に行った。
何人もの警察官が緊急車両で運ばれていくが、皆顔に白い布が被せられていた。
その中に。
前島さんらしき人物もいたが、最早わからなかった。
家族や自衛隊などの雑踏の中、結局は遠目からしかわからない。俺たちはいくら手帳を見せたところで“危険区域”に入ることは敵わなかった。
やるせない気持ちのまま現場で朝を迎え、下された結論が、強引に終幕となると、俺はなんてみんなに声を掛けていいのかわからなかった。
だけど。
『君は君のやり方を信じて』
これだけは忘れてはいけない。そう胸に刻んだ。
朝になって一時解散。そこからどうなるか。一応、本日中にと言う話だった。そして俺たちFBIの仕事は事件の指揮と援護だったが、それは終息に向けての人事移動だった。
一応捜査は警視庁とマトリが持つ形にはなった。
多分これでチームは解散だろう。
最後は一人一人に頭を下げて挨拶をし、現場を離れた。
「壽美田さん」
最後、猪越さんと別れるとき。
「…呼んでくれてありがとうございました。また、会えたら…」
「…こちらこそ」
きっともう…。
帰りは俺が潤を乗せて家まで送る。
「着いたら起こしてやるよ」
そう言ってんのに。
ダルそうながらも潤は始終喋っていた。
俺がいない間のことやらなにやら。
後半は聞き流すのも面倒になって返事も返さなかった。
「お前は?」
だけどふとそう振ってくるから。
「へ?」
「いや、俺ばっか喋って疲れたから」
「…もっと前にやめとけよ。
別に。これと言って話せるようなこともないなぁ…。楽しいことは、特に」
「なんだよつまんねぇな。どうせ寝るなら聞いてやろうかと思ったのに」
タバコを取り出す。火をつけると、「アメスピ」と、潤が呟く。
「ん?」
「アメスピの青いヤツ。あの人も吸ってたね…」
思い出す、過去の面影。
開けたてのアメスピの箱を何度か叩きひょいっと一本抜き、タバコが抜きやすくなったところで何故か潤に箱を奪われ、3本くらい抜いたと思えば、自分の箱を開けて4本出し、すり替えた。
「何してんのお前」
「気分によってタバコを変えられる、ロシアンタバコ」
「ふざけんなよお前、お前確かメンソールだよな」
「イエス」
「てかいつから吸ってんだよ。吸ってなかったよな」
「うんまぁね。
大丈夫大丈夫臭い移りしないよ一ミリだもん」
「はぁ!?そんなの森林浴いけよ」
「偏屈だなぁ。銘柄はほら」
ちらっと見てみる。白いパッケージだ。
「キャスターって根強いよな。JTすげぇよな」
「甘いな流星。これはキャスターじゃない。ウィンストンキャスターだよ」
「え?なにそのインチキ臭ぇ感じお前らしいな」
「んだよどーゆー意味だよ。キャスターがウィンストンに吸収されたんだよ」
「…JT強いわやっぱ」
そんだけ言うなら吸ってみたけど。
潤は一口で咳き込んでいた。
「すぐなくなるしこれさ、お前嘘だよインチキだよ。空気だよ」
「なん…だよ…これ!お前常にバーベキューかよ!」
これに懲りたらもうやらないだろう。さっそく懲りたのか俺の箱に2本返して、2本“キャスター”を持っていった。
「吸い終わんねぇし…気持ち悪…」
「じゃぁ返せ。俺は吸った気しないんだ」
アメスピの火は消えていた。
「あー、ほら。これ吸い続けないと消えるんだよ燃焼剤ないから」
「…どっちが薬中だよ」
「お前のより遥かに身体にはマシだからな」
「あー、タバコやめようかな」
「それがいい」
「まぁ海外行っても思い出せるね」
…そうか。
「てか寝てろようるせぇな。よく疲れないなお前」
「もうちょっとだし目が覚めた」
「あっそう」
それから潤の口数は少しだけ減ったが、やっぱりずっと喋っていた。
潤のマンションの付近で車を停めると、
「今からガキんとこ行くの?」
と聞かれた。
「まぁな」
「よほど気に入ったんだなお前」
「うーん、そうかもな」
「まぁほどほどに。じゃぁな」
そう言って潤はマンションの方に消えていった。
あぁ、終わった。
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