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「人質は?現場の警察官は?」
「…大変申し上げにくいのですが…。
ごく一部の警察官が、まだ…」
「え、じゃぁ…前島さんは…?」
「はい…。今…自衛隊等が救護に向かっていますが…わかりません。先程起こったようです。
どうやら小規模な物のようです…。人質は避難したあとのようですが現場検証中の鑑識や指揮官、刑事など、現場で仕事をしていた者は…」
泣きそうになりながら猪越さんは語る。
「…猪越さん、行きましょう、まだ、まだ救護はしてるんでしょ?」
「流星、」
「ですが、壽美田さん、」
「なら、早く」
「…自衛隊も近付けない。…どうやら毒物が爆弾に含まれていたようで、絶望的だと…」
「は…」
力が抜けた。
「生憎…交通規制などは掛けていたので、一般市民の犠牲はなく、犠牲は、警察官くらいなものかと…」
「確かに…マトリは途中撤退したからな…」
頭が真っ白だ。
「なんだそれ…」
「流星…」
「俺は、何をしたんだ?」
数々の犠牲を出してしまった。
「壽美田さん、」
「…それって、だって、どうやって」
「…詳しいことはまだ…」
「…こちらからは?要請は?」
「むしろホテル側へ要請していた位なので、行けません」
「…くっそ…!」
なんで、どうして。
「落ち着け流星」
「落ち着けるか…!判断ミスもいいところだ…!俺がこっちに来ていなければ、ホテルに絞っていれば、せめて犠牲は出なかった!」
「だがもしここに居なければ、犯罪は増えたんだよ流星」
「あぁ!?」
「彼らはむしろ立派じゃんか。市民は守った。俺たちも犯罪は防いだ!これ以上もう打つ手なんてないよ!」
「甘いんだよ!ここで取り逃がしてなければ防げたかもしれない…。
これで俺は何人目なんだ、何千人殺さなくちゃならないんだ、たった一つのミスで、こんなに」
「悪かったよ!」
潤が怒鳴る。
「悪かったよ。お前の気持ちはわかったよ。
お前は最善を尽くしたよ。だからこれは、下にいた俺たちの連帯責任だよ」
「…潤」
「だからやめてくれよもう勘弁して!お前が弱気じゃ気が滅入るんだよ!」
泣きそうになって言う潤に、自分が情けなくなった。
「…ごめん」
「謝んなよ胸くそ悪ぃ」
「うん、ごめん」
「日本語通じろよエセ外人!日本に帰ってこいよバカ!」
「すみません…」
「あーもう死ね!死んで詫びろいっぺん!いっぺんだから帰ってこいよ、てめぇの骨は俺が拾って密葬すんだからよ!」
「お前ら果てしねぇな」
こんなに真剣に喧嘩しているというのに。
猪越さんなんか唖然としているのに。
政宗は何事もなかったかのように笑った。
「なんだお前、先輩だからって笑いやがって不謹慎じゃねぇかこの髭面!」
「あー、姫ご立腹だよ王子。どうにかしろよー」
「え、いや…」
「…大丈夫だよ流星。お前は立派にやったよ。そう言いたいんだよ潤は。受け取ってやれ。
お前に出来ることなんて限られてる。いいじゃねぇか仕方ねぇよ。お前頑張ったって人間だもん。スナイパーだ狂犬だ、FBIで様々な役職で呼ばれたって所詮ただの人間だもん」
「…でも」
「うるせぇ偏屈。黙って今の現場片付けろ。それが優先事項だ。
猪越さんっていいましたね。ありがとう、ご苦労様。辛いと思うけど、はたまたこんな若造の付き合いさせて申し訳ない。酷なことを言いますが…今は大使館を、我々は片付けましょうか。な?流星」
「…はい。
すみません、よろしくお願いいたします」
政宗の一言で、少し頭が冴えた。
ダメだ、まだまだ俺は。こいつには敵わん。
「これでも可愛い後輩なんです。すみません、俺からもよろしく」
「はい、かしこまりました」
猪越さんの力強い返事と、差し延べられた手。握り返して結託が出来た。
「後で…二人で行きましょう。すべてが済んだら」
「はい。じゃぁ、我々も急ピッチで進めますよ」
漸く猪越さんは微笑んで言ってくれた。
「ったく。さて仕事戻るよ指揮官」
「…そうだな」
最後に乗り、一本だけタバコを吸って、現場に戻ることにした。
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