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「…行こっか?」
環は頷いて立ち上がった。手を貸すと、はにかんで、握ってくる。
「これ、政宗が?」
あの野郎、良いセンスじゃねぇか。
ただこっちは、環がシャツとズボンだろうとと思っていたからかなり動揺してるぞ。
不安そうな環の表情がどうも拭えないので、「いや、似合ってる。あいつ、センスいいな」と弁解。
はにかんで少し俯く環を見て、やっぱり照れてるのかと確信。気付いたら、こっちまでなんだか照れ臭くなってきてしまった。
ぎこちないまま受け付けに挨拶をして、笑顔で見送られながら気付けば手を繋いでエレベーターに乗っていた。
なんだか気まずい。
「…具合…悪くなったり、嫌だったりしたら…何か…あ!裾を引っ張るとか、手を掴むとか、してくれよ?」
漸く、環は微笑んで頷いた。さっそく手首を掴まれたから、具合が悪くなったのかと思ったら、両手を合わせてこくっと頭を下げる。ありがとうの合図だ。
だから、思わず頭をわしゃわしゃと撫でて、「どういたしまして」と言うと、キョトンとした顔をしていて。
それくら、楽しい。本当に楽しい。
表情がコロコロ変わっていく。言葉なんてなくても、ただそれだけでわかる。ただそれには、もちろん考えなくちゃならないときもある。
それが楽しい。
環には言葉がない。
だけど人より、表情がある。
一階までついて病院を出て喫茶店に向かった。
始めは凄く緊張していたけど、ずっと手を繋いで歩いていた。
人の気配なんて最早環にはどうでもよかったようだ。周りの風景や空の色、鳥が飛んでいく姿。そんなことに、忙しなく目を向けていた。
裾を何度もちょんちょんと引っ張られた。環が指差す方向を見ると、自然があって。目を輝かせて楽しそうに見ている環を見ていたら、やっぱりよかったなと思えた。
喫茶店までのたった数百メートル、数十メートルの距離すべてが新鮮だ。
喫茶店はなんとなく、ノスタルジックな雰囲気の、古い老舗なような所だった。看板はどちらかと言えば和風。“喫茶 古都莉”と書いてあった。
席に空きはあった。昼のランチピークが過ぎて少し落ち着いたのだろうか。
窓際の席に座る。
環が少しそわそわしている。多分、外より情報が少ない分、他人が気になってしまうのだろう。
メニューを開いて二人で眺めて。
「どれがいい?」
と聞くとメニューを指す。アイスカフェラテ。俺も同じものにしよう。
店員を呼び、アイスカフェラテと、取り敢えずBLTサンドを注文。
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