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「Do you understand English?
(お前ら英語わかりますかー?)」

 二人揃って訛った「Oh,Yes.」多分二人は英語でやり取りをしていたのだろう。つまりはアジア英語だ。ちょっと厄介だなぁ。
 隠し持っていたFBI手帳(言わずもがな効力なしのフェイク)を見せ、

「An international policeman. You're arrested.
(国際的な警察官です。お前らを逮捕しまーす)」

とにっこり告げれば、チャイニーズ女はキレ気味に、「Fuck you!」とぶん殴ってこようとするので、殴り返したら少し吹っ飛んでしまった。後ろで伊緒が「痛っ…」と漏らす。

「The word that isn't supposed to use.Arrested in Bodily harm.
(それは言っちゃいけない言葉だよ。傷害罪で現行犯逮捕ね)」

 チャイニーズもコリアンもポカンとしてる。意味わかんなかったかな。

「Did you understand!?」

 首を横に振る。ダメだこいつら。バカすぎる。

「政宗、逮捕。無理。こいつらアホすぎる。あんた現役っしょ。国際けーさつ突き出して」
「…お前さぁ…俺ガチで車に色々置いて来たっつーの…」
「あぁ、そっか」

忘れてたわ。

「えー、やだぁ、今サイレントスナイパー呼びたくねぇ」

 あの不機嫌面が目に浮かぶ。「誰だよ!?」と言う二人分のツッコミに、「高田だよ」と返す。溜め息も出る。

「つかマトリ案件だ。まず警察呼ぶか。
 はーい立てコリアンチャイニーズ」

 そのまま政宗は渋々コリアン野郎の肩を掴み、俺はチャイニーズ女を抱き抱えて雀荘を後にした。
 伊緒は後ろからついてきながら「すみません、すみません」といろんな人に謝っていた。

 暴れまくるチャイニーズ女を一回壁に押し付け、耳元で「在安静的(静かにしてよ)」と言えば、何故かふと人の顔を見て赤くなった。

勘違いしているようだがセックスアピールじゃねぇぞクソジャンキーが。まぁおとなしくなったからいーわ。

 結構強めに顔をぐいぐい押し当てて片手でマトリの番号を呼び出す。

『はい、厚労しょ』
「厚労省のスミダです。赤羽の雀荘でジャンキーを現行犯逮捕。韓国人と中国人。所持していた麻薬と銃は押収しました。ウチの案件じゃないんで一応お宅らに連絡入れたんだけどどうする?」
『あぁ、スミダさん。お勤めごくろーさんです。ウチの荒川は元気にしてますか』
「はいはい。変わりますか?」
『いえいえ結構。彼とは喧嘩別れしたんで。お宅では大丈夫ですか?』
「…あんた誰?」

 俺が露骨に不機嫌さを出していると、政宗が手を出してきた。多分代われと言うことだろうが、それを聞いてしまっては、変われない。

『ははっ、麻薬取締役部の部長、|原田《はらだ》と申します。今後とも何かと世話になるかと思いますんで。てか、お宅の噂はわりと聞いてますよ。仲良くしましょうよ』
「…はぁ」
『赤羽の雀荘ね。なんでんなとこにいたかは聞かないでおきますよ。で、店の名前は?あとわかる範囲で。
 おい|辻井《つじい》、赤羽に向かうぞ。外人だ、今すぐ車用意しろ』
「…|渓谷《けいこく》。ええっと犯人の名前は…」

 チャイニーズ女のジーパンのポケットを漁る。あったあったパスポート。

「パスポート表記の名前は、チャイニーズ、22歳女、リ・メイ。そっちは?」
「チャン・リャン24歳」
「…まぁ、だそうですけど。こんなの偽造パスでしょ。拳銃も粗悪品だ。トカレフのコピー品でしょうなぁ」
『今時いるのか…。まぁ、かしこまりました。元気そうだな、荒川』

 満足げに言って原田さんは電話を切る。

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