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「…俺は好きだけどな」
だが政宗は、俺が5分で作った味噌汁を見てそうポツリと言った。
「…俺も好きですよ、流星さん」
なんだなんだ二人して。心理がわからんがそんな深刻な顔されるとこっちが困るぞ。
「俺は嫌いになったよ」
「克服しましょっか。日本食ですし」
「えぇー。お前ね、この歳でね、苦手な物ってね」
「大丈夫、じゃぁ俺も…うーん、ピンポン出るようにしますから」
それをこいつに言われてしまうとなぁ。
「…食い物は?」
「…猫」
「ないね。わかったよ」
まったく仕方ねぇな。
「さぁて、食い終わったら部署行くわ。ニトログリセリンとバルビツール酸か…」
急に政宗は仕事のときの、引き締まった表情を浮かべた。
仕事スイッチオンですね。まぁ俺は病院の帰りに寄る気でしたが、あんたはそうしなくても、普通に特本部に直行したね、わかってはいたけど。
「このパターン、嫌な予感がするな」
やはり、あんたもそう思うのか。
「…あんたが考える嫌なパターンって?出来れば、最悪パターンを先に聞いておきたい」
多分俺が考えているパターンや、潤が考えているパターンと相違ないだろう。この人が、政宗が、白であるならば。
何故なら俺たちは、昔このパターンに遭遇したからだ。
「…特本部の内部にエレボス内通者が、いる」
こうもはっきりと叩きつけられてしまっては、胸がひやっとして血液が逆流するような思いだが、なんとなく、スッキリした。所謂、胸の|痞《つか》えが取れたと言うやつである。
「…俺も、そう思う」
「だが流星、」
「わかってる。あんたが言いたいことは、わかってる。
大丈夫、ありがとう。胸の痞えが漸く取れた。上等だ。だが…。俺はそれを一度経験してる。あんたも、潤も。俺だけじゃないんだ。
情けないがな、そこは…俺は繰り返したが対処を知っている。しかし当時と同じことはしないつもりだ。間違えば、容赦なく撃ち殺してくれる相手が二人はいる」
「流星、それじゃ」
「だがあんたや潤にそれを背負わす気はない。今は最悪パターンを言っている。
伊緒、お前も聞いとけ俺はな、部署を一個壊滅させた。それだけの男だ。それが今や同じ部署の…リーダーをやっているようだ。
ねぇ政宗」
だからこそ、告げなければならない。
俺は単なる人殺しだ。だが…。
切なそうながら真剣な表情で俺を見る二人に、出来るだけの虚勢を張って、思い付く限りの言葉を告げる。
俺はあれから、7年、歳を重ねたと言うことを。
「なんだよ」
「あんたと、それと潤になら俺は殺されてもいいと思ってる。これは本音だ」
「やめろよ」
「伊緒、俺はお前を助けたとは思っていない。だから最後の弾を預けた。その意味、わかるか」
「何、考えてるんですか」
「だが、これを言うのはもう最後だ。これが覚悟だ。嫌なら辞めろ、それだけだ、すべてを背負ってやるから」
「流星、」
「はい」
「わかったよ。行ってくるから。待っとけ。
…俺も覚悟を言うか。
幕引きは今度こそ、ハッピーエンドがいい、数々の犠牲を見てきた、これは、無駄にしたくない。無駄だと言いたくないんだ。これは俺の、警察官としてのエゴだ。
おかしいと、甘いと言いたきゃ言え。ただ俺は、誰かが死ぬのは嫌なんだ。人だからな」
政宗は真剣にそう語り、「ごちそうさま」と手を合わせた。その日常だけは読み取った。
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