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 病院に着いて2階の広間に、潤は荷物をすでに纏めて待っていた。
 テーブルに書類とパソコンを広げ、顔を上げて俺の姿を確認すると潤は不適な笑みを浮かべ、「待ちくたびれたぞ鉄面皮」と憎まれ口を叩いた。

「悪いな」

 広間のテレビでは昼のドラマの再放送が流されていた。いつからここにいたのだろう、ニュースは、観ただろうか。

「引っ越しだ」
「は?」
「警視庁から厚労省へ」
「え?何が」
「部署だよ。昨日の、恭太の…」
「あぁ、それでユミルが写ってたんだ」

どうやら観たらしい。

「ユミルどうしたの」
「いま政宗が向かってる。生きてる。元気だったよ電話越しでは。なんでもジャンキーが暴れたんだと」
「なにそれ」

 嘲笑うような軽い口調。しかし、視線はどことなく鋭い。恐らく潤は、わりと俺に対して批判的だ。

「ざまぁねぇなクソが」
「そうだな」
「まぁだが…おあいこだ。俺もこの様だ。
なぁ、俺らさ、だいぶナメられてるよなぁ、このエセ宗教テロ団体に」
「…あぁ」
「…もうこだわるのはよそうか。俺も痛感した。バカみてぇなエゴやらお綺麗事やら…泣き言はどうやら通用しねぇな」
「…潤」
「相手は最早、…人間じゃねぇよ」

 吐き捨てるように言う潤の目は恐ろしく冷えていた。

これは、少し。

「潤、確かにその通りだ。
 だが、俺たちはせめてまだ、人でいなければならない」
「…酷なこと言うなぁ。まぁ、わかってたけど。
 だが忘れないで欲しい。俺は大切な人を失った。お前だってそうだ、仲間だって失った。救えなかったたくさんの人もいて被害だって」
「わかってる、だから言えるんだ。潤、せめてお前は人でいて欲しい」

 潤が息を呑んだ。
 そして、少しばかり湿った笑顔を浮かべ、パソコンを片付けた。

「…らしくねぇな、お互い。
 悪ぃ。行こう。少し、揺らいだわ」
「あぁ」

 これから何が起こるのかはわからない。けれど同じ道だけは歩みたくない。

あまりにもあんたらのそれは、俺にとって残酷だったから。それはきっと、潤だって変わりない。けれど生きていれば仕方がない。終わりにしてやる。俺のためにも、あんたらのためにも。

「潤」
「あんだ」
「ついたらまず大仕事だ。
 マトリの副部長が何者かに拉致された。それの手伝いだ」
「あ?」
「まぁ行ってから詳しく事情は聞こう」
「…はいよ」

まずはそれだ。
漸くメンバーは揃った。しかし今度は珍事件。

闇は、深まるばかりだ。

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