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「潤ちゃーん!」
「ユミルー!」

 厚労省、新事務所に漸く到着。
 化け物二人は漸く再会を果たす。抱き合う二人と、「潤さん!」「おかえりなさい!」と言う後輩たちの声。

「みなさん、心配した?ただいまー」

 潤はわりと軽い感じでてへへ、と、後頭部を所在なさげに左手で掻きながら愛想笑いを浮かべていた。先程までとは打って変わっている。

「ちょっと六本木で酒飲んでナイフ振り回してたら腹に刺さっちゃったよ」

何を言っているんだこいつは。
しかしまぁ。

 そんなクソみたいな戯れ言を困った笑顔で言う潤を見て、部署の面々は閉口した。これは後輩は果たしてどう出るのだろうか。

俺たちは敢えて黙っておくぞ、潤。
後輩たちよ、勇敢ならばキレてもいい。なんなら腹をかっさばいてもいいぞ、そいつの。

 そう思って見守っていると、「あり得ないでしょう」と、意外にも瞬が、溜め息を吐いた。

「…そうですね。
 監督官、いや、潤さん。私も貴方を探すの、尽力したんですよ?」
「まぁいいけどさぁ…。俺らでもなんか、もう…、ほっとくのも違うと思うんすよね、潤さん」
「え?マジ?」
「…マジぃ、私もぉ、潤さんいなくてぇ、薬とかぁ、てかここに潤さんの荷物用意したの私なんですよぉ?」
「だってよ。お前が思ってるよりみんな心配してたんだぞ姫」
「あぁ、そう…」

 少し、俯いて潤は考え込んだ。
そうそう、それでいいんだよお前は。

「…みんな、潤さんと同じですよ。大切な人、いたんですから…」

 そう伊緒が言う。
 それにみんなは、なんとなく頷くような、取り敢えず同意は確かにしたような、一様に顔を見合わせていた。

「…そっか。
 なんだよ、めんどくさいなぁ。はいはい。ただ、あんま醜態だから話したくはねぇけど、笑わないでよね」

 そう言って潤は、速見長官の一連の事件を話して聞かせた。

内容は簡単だった。

 昔の仲間から依頼をされ、俺にも内緒で勝手に捜査に行ったら黒だった、結果この様だった、と。

「笑っちゃうけど本当の話。
 バカだよねぇ、昔からそうやって、汚れ仕事ばっか押し付けてくるやつだった。けど言うこと聞いちゃうのはなんでだろうな。わかんねぇや。けどもうそれもないかと思うと、なんかな」

 横溝の部下としての潤の仕事は確かに最期、それがこんな結果だった。

「思い出しても、ろくでもねぇアバズレだったのに」
「残念だな潤」

そんなに言うなら言ってやろう。

「いまはクソ殺人鬼のスポッターで、この部の現場監督官なんだな」
「…わかってるよ」
「まぁ気持ちもわからんでもねぇよ。俺だって、思い出してもテロリストの、あいつの、…あいつにヒントをもらって、バルビツールとコデインに行き着いた。俺は未だに疑問に苛まれている。あいつを殺したいまも、どうして、本当に?ってな。そして新たに現れた敵に対しても、どうしていいのか、わからない。
 けど想いは、一つなんだ。終わりにする。どんな答えだったとしても」
「…うん」
「だけどそれは自分のため、人のためだ。お前らの、命を無駄にする終焉は望まない。安全第一。助け合って、自分の身は自分で守ろうよ」

人を救う。
それって本当はすごく難しいことだから。

「甘いねぇ。…けどまぁ、嫌いじゃねぇよ」
「そうかい」
「さて、わかったよ。じゃぁ人を助けようか」

そうだ。
我々には今、緊急で仕事がある。

『警視庁麻薬乱用者暴動と厚労省麻薬取締部副部長拉致について』

 厚労省麻薬取締部、通称マトリと、合同捜査を始めることになった。

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