2


「さんきゅ。
 それが…。
 現在調査中、帝都大学の系列、帝都医療大学です」
「ビンゴってるよ流星、マジで」
「そういうことだな。だがまあ待ちなさい。
 つまりは犯行声明を発信したケータイが医療大にあるという証拠でしかないわけだ。本人がここにいるわけではない可能性もある。里中さんの私物のケータイを持ち要求をしてきているのは医療大学でこのケータイを発信している。それはつまり当たり前だがあんたらが帝都に今張り込んでるのを相手方が承知しているという見せしめだろうな。早々に撤退を薦めますよ。
で、要求が…」

『2億と、帝都大学潜入捜査の資料開示』

「完璧にやり口がこの前の大使館だな。
 気付きました?ここ。帝都“医療”大学ではなく帝都大学になってるんですよ。ここのマークはお宅らは?」
「いえ、まぁ延長線では…」
「行くか潤。
 恐らく犯人の焦点には帝都大学もある。
 俺がここに出来ることは帝都大学からの撤退。代わりに俺らがこちらは足を踏もう。帝都大学の資料、微力ながらあったよな。あれをこちらに貸し付けましょう。その代わり医療大学の資料をください。照らし合わせれば自ずとどちらも黒である裏付けは取れるんだろう。だが犯人が目を反らさせたいのは、恐らくは帝都大学。
 オチ的には、それに気付いた奴がいて里中さんを医療大学の方に監禁している。助けに行ったところをバーン。騒いでるうちに、帝都大学の闇はどこかまぁ、ブローカーにでも預ける。アイテール?かねぇここで言うとこの」
「そんなの…」
「まぁ前回のパターン、というよりお前の読みが当たってりゃぁ多分そのパターンだな。
 嫌だねぇ俺病み上がりなんだけど」

 原田さんはさっぱりという顔をしている。そりゃそうだ。話事態が非現実的だからな。

「半年前のホテル大量虐殺と大使館麻薬密売事件、指揮官俺だったんですよ実は」
「あっ、はぁ…!」
「あの…、」

 雀荘|兄《あん》ちゃんまで俺をまじまじと見る。同業者として二人とも、色々な感情入り交じる視線。

仕方ない。あれは俺の失態だ。

「あれからウチの部署、立ったんです。あれから、と言うとまぁ語弊ありまくりですが。そもそも読みが正しけりゃ多分、こりゃぁウチの案件だろう。
 あんたらその様子だとついさっきのテレビ見ました?警視庁でも事件起きたばっかでね。ジャンキーが暴れてウチの捜査員が取り押さえてんだよテレビの生中継中に。
 んなクレイジーなことしてくれんの、あのゲス野郎しかいないだろうな今の平和な日本じゃぁ」

ちらつくサブマシンガンと背中。
俺はまだここだ、樹実。

「…あんたは何を掴んでる。ウチの里中は何故こうなった」
「理由なんてわからん。まぁ麻薬扱う公安でたまたまバレちまった、これに尽きる。
何を掴んでるか、はっきり言ってなんも…なんも掴んでないんです。
 やり口はわかる。昔からそうだ。関連性もわかる。ただ公安だ。事が起きねぇとこうして手が打てねぇ。あと一歩で逃げられている。情けない、話なんです」
「…噂じゃぁお宅ら、元は大分昔に解散した部署の後続だって」

 雀荘兄ちゃんが言いにくそうに言った。少しはまぁ、知識くらいあるらしい。

「そうですよ。今も昔も同じ組織を追っていた。昔一度壊滅させたと思っていたら半年前に現れたもんだから再結成。今に至るわけです。
 当時部署にいた俺やこいつ、あと荒川も共に、いま、こうして…。
 まぁ昔話はいい。今は里中さんを助けましょう。ただこれで読みが外れてどちらかの部署が全滅するのもナンセンスだ。半々に別れて医療大学、帝都大学へ行きましょう。
 ただ読みが当たってれば、今捜査している人権は目をつけられている、もしくわ…」

 内通している可能性がある。

「その方々は帝都大学へ向かわせてください。
 こちらも優秀なのは揃えますが一言、俺から言わせてください。
 安全第一。自分の身は自分で守ってください。Break a leg.マトリなら拳銃使えますね?」

 こんなことしか言えない。潤が思わず「ふ、」と笑った。

「相変わらずセンスねぇな。まぁいい。
俺は死んだら水葬で」
「お前も毎回センスがねぇな。言ったからには俺らは医療大学へ行くぞ。俺は密葬な」

 原田さんは腑に落ちない様子で黙って俯いている。まぁ、動かないならそれはそれでいい。

- 220 -

*前次#


ページ: