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「今更漸く公安が動き出したと言うわけか」
「そうだな」
「だからふざけんなっつってんだよこのクソ公安が」

 相手に殺意が籠った。
 ちらっと犯人は瞬を見る、潤は瞬に「下げろ、瞬」と命じた。

「潤さん」
「わかってる」

 そして潤はにやっと笑い、自分の銃口を蟀谷に当てた。

「なっ、」

なにやってんだ、あいつ。

「俺が死ねば満足かクソ学者。罪のない同僚を俺は逃がしたい。一緒に死んでみるか、猿芝居。
 悪いがお前が殺そうと企みたあのチビはまだあんたと違って未来がある。ここで焼死されたら困るんだよ。
 本来ならお前なんてほっといて窓からでも逃げりゃいい話だが、せめてあんたが何に浸水してやがるか聞き届けようかと思ったが末路を言おうか。
 そのテロ集団は一度俺や同僚が叩き潰した。だが、また復活し今に至る。大学研究者を名乗りオオボスがやってんのは麻薬開発だ。研究者なんてそいつから見れば資源ゴミも同然だ。お前がそれで死ぬ理由が俺には見つからない。そんなに死にたきゃ死ねばいい。だが、何も知らずに研究だけして最期はそれだ」

それ、
交渉か?

「ふざけんなよ」
「てめぇがふざけんなよ」
「俺がどれだけ失ったと思ってるこの研究所で…それがテロの荷担だというのか?」
「だから聞いてるんじゃねぇか。何も知らねぇならこのまま捕まっちまった方が重要参考人程度で身を守れる。諸悪の根元を俺たちは追ってるんだ。何吹き込まれたか知らんが、今あんたがやってることは意味ねぇっての」
「ふざけんな…、人生詰んでんじゃねぇか」
「どうかな。終息させればあんたは別に悪くないんじゃねぇの?あんたはいま、俺たちを巻き添えにして殺す予定だったんだろ。だが今のところ誰も死んでいない。
 あんたを助けようとは思ってないが道は与えたつもりだ。あとはあんたの勝手にするがいいさ。俺はいつでも殺されてやるがそれも全体的に筋違いだ。このまま俺たちを殺してあんたが死んでも、あんたが俺たちを殺して生きて帝都に辿り着いても、あんた一人ここで死んでもな。
 人生詰んでる?んなの生きてるから言えるんだよ」
「ふはは…」

 男は力なくへたりこんだ。

「要するに俺は始めから利用されていただけか」
「そうだな。やつらのなかではあんたは死亡要員だなここまで来たら。
 瞬、そいつを捉えろ。裏口からお前はそいつを警視庁に受け渡せ。こっそりな。
 一回死んでみろ学者様。お前はここで死んだ。どうだ交渉成立か?
 なら俺たちもさっさと裏口から帝都に行きたいんだけど。お隣だよな?あんたがここをぶっ壊してくれたせいで今全員死にそうだからな」

 瞬が医者野郎の元へ銃を向けたまま寄り、手錠を掛ける。それを見た潤は歩いていきそいつを立たせ、銃を取り上げた。

「武器はこれだけか」
「…ああ」
「これ、チーターだな。
 こんなもん使おうだなんて、あまっちょろいな。で、逃げ口は?」

 銃は炎へぶん投げた。
 ホントはそんなの、どうだっていいだろうが、潤はそいつを抱えてこちらを見てから歩きつつそう犯人に訪ねる。

 瞬は隣で犯人に銃口を向けたままだった。

「…左。
 開くかはわからんが階段付近に非常口がある」
「だとよ、流星」
「…道案内を頼みたい」
「…部長さん」

 吉川は、ふと炎へ、諒斗から取り上げた銃を一発撃った。誤発を防ぐためだろう。
 それから諒斗に返し、告げる。

「外には|日高《ひだか》がいます。学者と生徒は皆避難させていると思います。
 受け渡しを、日高に」
「ふざけるなマトリ風情が」

 そう言ったのは潤だった。

「お前ら全体的に信用出来ねぇんだよ。だったらウチの瞬に護送を頼む」
「それじゃあんたらに問題が生じるだろうが」

 そう言ったのは辻井だった。
やたらこいつは潤に突っかかるな。

「辻井くん、悪いが今回特本部はお宅らを信用していない。
 問題なんざ上等だ。それくらいで済むならいくらでもいい。だが、部下を殺すわけにはいかない。現にウチのチビがあと一歩で殺されかけている」
「大丈夫ですよ。
 殺したくない、信用できないというなら尚更です。そちらのメガネのお坊ちゃんと共に帝都へ向かってください。
 元はこっちの事案だ。ケツ拭くのは我々でしょう。
 星川さん、こうしましょう。
 そいつに何かあったら俺を殺してください。俺がそいつを護送します。あんたはその代わりウチの部長に全て話し、守ってやってください。
 俺らだってあんたらなんか信用していない。まだ里中さんも若林も、俺らは知らない、いつの間にか話が進んでいる。
 それは部長さん、あんたが俺たちに何も言ってくれなかったからじゃないんですか。
 部長も知らない。部長に何かあったら俺があんたを殺しに行きます、星川さん」
「はぁ…?」
「スパイ風情が調子に乗るなという話です。まああんたらを呼んだのは部長だ。だから部下である俺たちは、あんたらを守る義務だってあるわけです」

言いたいことはわかってきたぞ。

「辻井くん、君にそれが出来るのか」
「やりますよ、部長さん」
「…ならば一緒に帝都に来い。
 瞬、吉川くんと共にそいつを護送しろ。その日高という逃げ遅れたやつは置いておけ。ホントにやる気があるなら今頃この現場にはいない、被害者警護に回るはずだ。
外に出て、そうでなかったら辻井くん、君が責任を取れ」
「…あそう」
「悪いな前髪。
 ウチの部長は気が短いが加えて用心深い。
 辻井くん、ウチの瞬に何かあったらお前、わかってるよな」
「…はい」
「よろしい。
 じゃぁてめえらのボスの命は預かった。交渉成立だ。
 諒斗、お前も瞬と行け。はっきり言ってんなガソリンまみれにされて爆心地にいるお前の無能さは俺的には邪魔だね。その代わりお前、瞬と一緒に危うく死んじゃった、なぁんてこいつに聞かせてみろ。
 あの世までこいつは追いかけて恐らくお前ら射殺だぞ」
「うわぁ、」
「あり得ますね」

失礼な。

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