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 祥ちゃんはビールを飲みながらテレビをつけた。まだ夕方の情報番組がやっている。
 そこに映る大学の黒煙。機捜隊が踏み込んだ帝都大学だった。

「こっれ凄くね?」
「あそこに行ったの?」
「うんそう。いやぁマジ我ながらよく沈静化したわー。
 現場が有能すぎて俺行った時にはわりと片付いてた。まぁ、これフェイクだったからもぬけの殻だったけどね」
「うわぁ、最悪だなそりゃ」
「うん。もー必死になって後は捜索。けどキレーになーんもねぇっつーかこんだけの爆発だしもー意味なし。ここ二日瓦礫を退かして撤退」
「最っ悪だねマジで」

 そうだったんだ。
 いやまぁ確かに、そうだろうけど。ウチですらなんもなかったしな。

「つーか世の中怖いよなぁ。んな怖ぇことするヤツ誰なのマジで。俺平和主義だからまぁ、病んだわ」
「よく言うなぁ、警察庁テロったクセに」
「あれはね、最早ヤケだよ。てか褒めてくれたじゃん」
「は?いやないない。あれさぁ、俺が止めなかったらマジ今頃祥ちゃんいないじゃんか」
「まぁね」

 にやりと笑う祥ちゃんに少し安堵。
 あれがなかったら俺たちは今、一緒にないのか。

「ま、人生わからんもんだね」
「ジジ臭いな」
「そう?」

 祥ちゃんの前向きなのかなんなのかよくわからん一言に、なんかこっちも笑ってしまった。
 しかしまぁ、これっていつまで続くんだろうと頭を少し過る。多分、これは今だけなんだ。
そう、今だけ。

「でもね潤。最近物騒だからマジで腹刺されたり、気を付けろよ。君の身のフリだと命がいくつあっても」
「あーはいはい。ホントごめんて」
「うん、マジでね」

 それ以上、その話は終わった。
 いや祥ちゃんの気持ちは重々わかるけどちょっとふて腐れるよね。
 それがわかってか祥ちゃんはなんとなく俺を伺うようにタバコを取り出した。俺もタバコ。食い終わったし。
 互いに火をつければ「てか潤ちゃん」と祥ちゃんは話題転換をする。

「最近引き籠ってたの?もしや」
「うん、まぁね」
「なんとなくそんな気がした。ちょっと覇気がないからさ」
「え?そう?」
「うん。珍しく上司の愚痴もない」

にやっと笑ってそう言う。
そういえばそうかも。

「休日にまであーんな鉄面皮思い出したくないよ」
「あら、そう」
「もうねぇ、あいつにこの前「ぶっ殺すぞてめぇ」って言われたんだからマジ。パワハラだよね、殺人予告だよね」
「うっはっは!なんで言われちゃったの」
「俺がうーん、クライアントのゴタゴタを終息させたの、無茶しまくったけど。したらぶっ殺すぞだってぇ。嫌だよね全く、あいつなんて更年期でハゲればいいのに」
「で、なんて返したの潤」
「んー覚えてないけど多分「うるせぇ単細胞」的な?」
「あーあー、いつも通りだね」
「あ、イライラしてきた。
 大体ねぇ、あいつが働かないのが悪いの。つかバカなの!経理とかホント死んでる」
「あー…なんか話聞いてるとそんな気がするそいつ。だって鉄面皮で単細胞だもんね。最早サイレントスナイパー以外には許されないよねそのキャラ」

一瞬ぎくっとしたが。

「なにそれサイレントスナイパー」
「んー、あぁ、仲間が昔つけた上司のあだ名」
「流星みたいなやつ祥ちゃんの知り合いにもいるんだね」
「あ、そうかもね。まぁ多分そいつよりイライラ度合いが30%増しだけどね」
「それって人でなし30%増量じゃんやだ〜、そんなやつ仲間にしたくない」
「もー常にタバコくわえてたわあいつ。大体二言目には「うるせえ」だったし」
「今は?」
「部署すら違う。てか海外勤務じゃないかな?もー帰って来んなって感じ。
 いやまぁ海外でぶっ叩かれていーやつになって帰ってくりゃいいけどね。どうかなぁ…」

 懐かしそうに話す祥ちゃんは、話す内容のわりには敵意がなく。多分なんだかんだでそいつも大切な仲間なんだろう。

「なんだかんだで良いヤツではあったけどね」
「そうなんだ」
「あ、そうだ潤ちゃん」
「なに?」

 何かを思い付いたらしい。

「たまには風呂溜めていい?ゆっくりしたい俺」
「いーよ。いいねたまには」
「んじゃ、食器を潤が洗っている間に俺は風呂を洗うかな」

 それから祥ちゃんはビールを片手にふと立ち上がり、「サイレンが〜聞こえて〜も〜まだぁ」と口ずさんで風呂場へ向かう。機嫌が良いらしい。地味に唄うめぇ。しかしちゃんと声を掛けた。

「のぼせないでね祥ちゃん!」
「ん〜」

てかビールどうすんのよ。まぁ良いけどさぁ。

 俺は密かに「ごちそうさまでした」と言ってから食器を流しに持ってって洗い始める。地味にチキン南蛮、食器洗うの大変。

 鼻唄は止まない。

ふと、
こうしてあの人と過ごした日々を思い出した。こうやって食器洗って、あの人の下手な鼻唄を聞いて。

 ぱりんと音がした。
 手に血が滲む。

「潤?」

あぁそうだあの人。
死んじゃったんだっけ。祥ちゃんの心配した声に、思い出した。

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