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正直、それは驚きだった。

 両サイドに二人がいないのを良いことに、たまたま俺はあの日の、警察病院での一幕を観てしまったのだ。
 監視カメラに映った祥ちゃんが、警察病院に入り、不自然に映像は消され、俺の病室へ向かうところが。
 実に10分と掛からずに警察病院の入り口から迷いなく俺の病室に来ていた。受付嬢に手帳を見せて、恐らくは病室を確認していたのだ。

 10分。
 正直、ワンクッション何かがあった。そう考えてふと、長官の病室の階にあった防犯カメラを覗いた。
 祥ちゃんが乗ったエレベーターは、その階に一度止まり、寄っていた。俺の病室に来る前の時間だ。
 長官の死亡推定時刻とも一致してしまい、咄嗟に俺はその映像を処分した。

そして考えた。
何故だろうと。

 政宗や流星は果たしてあの映像を見ただろうか。
 政宗は俺に一度忠告をした。「山下祥真の知り合いか」「ならお前、厄介だぞ」と。

何がどう厄介なのか。
理由が甚だ見当たらなくて、ただこれは、多分あまりよくないものだと判断をして咄嗟にそうしてしまった。

どうしたらいいのか。

多分本当はどこかでわかっている。俺は案外何も知らないと言うことを。

それは自己防衛だと思っていた。人に干渉するに向かない人種だと。頭で考えたら発狂しそうな現象なんてたくさんある。

『潤は少し、優しいんですよ』

そんなことじゃないんだ、雨さん。

『だからこれを君に託す僕を、最期くらい、許してくださいね』

 あの日書かれた手紙とソレと。
 遺品を整理したときに覗いたあのデータは正直あの頃にはわからなかった。今だってわからない。

考えなくはなかった。
あの人を止めに行く、恐らくその行為に自分の未来が無いことなんて雨さんはわかっていたんだろうと。ならばきっと、闇に葬るべき物か、単に関係がない俺に託した自分の無念なのか。

「潤さん」

 ハッとした。
 愛蘭ちゃんの声が背中から聞こえて振り向けば、「すみません…」と。
 ちょっと睨んじゃったかもしれないなと反省をする。

「…どしたの愛蘭ちゃん」
「いや、あの、例のホテル爆破の件だったんですが」
「大丈夫ですか潤さん」

 向かいに座っていた慧さんにそう言われた。慧さんは愛蘭ちゃんと目を合わせ、「お茶を持ってきてあげてください」と命じた。

「酷く顔色が悪いですが」
「は、はぁ…」

 言われてしまえば焦燥感が勝り、一気に冷や汗が出た。
 お茶をいれてくれた愛蘭ちゃんや、それを聞いた諒斗と瞬が「汗やばいですよ」だとか「本気で大丈夫ですか」だの言ってくる。
 ユミルですら、「潤ちゃん、」とこっちに来ちゃうもんだから、

「あぁごめん、多分暑いの。ほ、ほら、流星が買ってきたヒーターが」
「止めますねぇ」

 霞ちゃんの声がした。
 霞ちゃんが立ち上がり、部署に設置された3台のヒーターのうち、入口の、俺に近いヒーターを消してくれた。

 休み明け、何故か流星は外国産の1台15万もするヒーターを3台部署に置いたのだ。確かに、奴は寒い国にも行くくせに非常に寒がりだ。
 しかしヒーターを消したことによりより冷や汗が出てきた気がして、お茶を飲めば最早、湯気が立っているのに俺の舌は熱さを関知しなくなってしまっていた。

 「暑くないですか潤さん、」と愛蘭ちゃんが心配していた。
 それにユミルが、「多分水の方がイイでしょ潤ちゃん」と、至極全うな意見をくれた。

「水あげてー。潤ちゃん、」

 そして近寄ってきてユミルは耳元で言う。

「お薬は?」
「あ、あぁ、うん」

 忘れていた。
 愛蘭ちゃんが水をくれて即、常備薬の安定剤を飲んだが、少し意気が荒い。
 ネクタイを緩めてはぁはぁと呼吸をすればユミルが「ヨシヨシ」と片言で背中をさすってくれて言った。

「ちょっと潤ちゃん暑いけど」
「うん、今少し寒くなってくる」
「そだね。一回ジャケット脱いで」

 思考がわりと働かなくて言われた通りに脱いでるうちに、ユミルにパソコンを覗かれた。

「…なに、」
「これ、いつの?」

長官暗殺は今は追うなと言われたし。

「あの、怪我したときの」
「なにか写ってたの?」
「見ていいよ、なんも…」

 あぁ思考がちょっとずつ遮断されてきた。

「不自然になんもないね」
「うん…で、」
「怖くなった?」
「うん…」

 落ち着いて汗が引けば途端に寒く。
 察したのかユミルが、いま椅子の背に掛けたジャケットを肩に掛けてくれた。

「そか。大丈夫、安心して。僕がいるから」
「は…?」
「潤をこんな目に合わせる奴は僕が始末する。僕はみんなを守るために存在するんだから」

は…。
ダメだ、ユミルにだけは、知られてはならない。

「ごめんちょっと外すね皆」
「大丈夫ですか、」
「付き添いま」
「着いてこないで。
 ごめん持病だから」

心配してくれた皆には申し訳ないが、とにかく吐こう。気持ち悪い。

 ちょっと目眩がしてふいにドアで振り向けば、みんな心配そうで。唯一ユミルが平然としていた。

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