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潤は「ふぅ、」と一息吐いてから、
まるで挑戦的に政宗を見つめて言った。
「悪かったよ。あの騒動で変態野郎から押収した薬、無くしたんだよ」
「いや…あそう」
なんだかなぁ。
政宗は食い下がると同時に潤を怪訝そうにみては「痩せたかお前」と問う。
言われてみれば、元からひょろいが確かに、痩せたかもしれないな。
「ん?
あぁ、最近家帰ってねぇんだわ俺」
「うわっ、」
でた。
謎の不安定遊びまくり期。
「なんだようわってぇ!」
「…お前って昔からあるよなそれ」
「自暴自棄なのか?大体そーゆー時だよなお前。
昔は18,9だからな、で済んだがお前、今や25だろ」
「まぁね」
潤は政宗に無愛想な返事をしてから「あーっ!」と、声を出しながら背伸びした。
「ちっとタバコ行ってくらぁ。腰痛い。女子二人凄いよね。俺この座りっぱなし無理だわ」
とか言って一人さっさと席を立ち、潤は振り向きもせずに部署を出て行く。
政宗と目が合えば俺は首を傾げるしかない。多分俺いま洋画に出てくるやつのリアクションだと思う。
「…俺今日そんなに凶悪?」
「まぁ、わりかし機嫌悪いっすよね」
「あそう。俺もタバコ行こうかな」
「俺も行きたいけどなんか潤の態度が複雑」
「すっごい女子みたいな会話してますねぇ、ぶちょーふくぶちょー」
凄く間延びした声が前方から聞こえた。霞だ。
目を合わせれば何故か霞は俯いてしまうが「あーね、霞」と政宗が言う。
「霞もしょげるなよ。隣に諒斗がいるだろ霞」
「え、俺?」
「お前お前」
諒斗はちらっと霞を見ては「いや、」とわざとらしくパソコンに向く。
プライベートねぇ職場だな。
春かよ。
霞は「何言ってんですかぁふくぶちょー」と返した。
女子みたいな反応だな霞。興味ないときの。いや女子だけど。
「女は失恋なんてあっさりですよふくぶちょー」
「え、失恋したの霞」
再び食いつくも諒斗は霞に「なによ」と拗ねられていた。
…プライベートのねぇ職場(大切なことなので刻み付けた)。
まぁいいけど。
「うっし…流星やっぱり行こうタバコ。マジやべぇ」
「ボールペンぶっ壊す前に行きましょうか。そろそろっすよね」
少し前から。
愛蘭の件辺りからこの人ボールペン握りつぶしそうなの、絶対気付いていない。
俺が指摘して気付いたらしい。「うわっ、マジだ備品が」とボールペンを起き政宗が先に立ち上がる。
「…すっげぇプライバシーなくね?ここ」
「ですね」
そもそも朝のリング即バレからしてプライバシーねぇよマジで。
二人で部署を出れば、マトリ部署が見える。前を通って廊下を歩けば「やっぱ潤さ」と政宗が言う。
「辻井かな」
「さぁ…。まぁアテはそこしかないんじゃないすか」
わりと興味ねぇけど、それ。
「うーん…姫はなんでまたあぁさ、不安定になっちゃうかねぇ王子」
「うわ久々聞いた。
なんかあったんじゃないっすか?しょーもねぇこと」
「自暴自棄すぎて」
「運ばれないといいっすねあいつ」
そりゃぁ凄いからなあいつの性欲。最早目を瞑るからまともな風俗に行って欲しい。
流石にそこまで若くはねぇのかなと思ったらまたこれだよ。
「まぁ、仕方ねぇかもしれねぇけどさ…」
「気持ちはわかりますけどね。なんか家に帰りたくねぇの。
まぁ職質されてねぇなら別にいいや」
「冷てぇな鉄面皮。
いやぁ…やっぱ山下かなぁ…」
「何故?」
「山下と多分知り合いだろ、あれ。だとしたら…山下かなぁ辻井かなぁと、おっさん的には心配に」
「待って、女は選択肢にないんですか」
「アテがいない」
「あーね、確かに最近聞かないね」
そんな潤が最近本当に色恋沙汰を聞かなかったのに。しかもオープンにバイセクシャルとか言い始めたのもこの部署だ。
「…マジでプライバシーないっすよねウチ」
「まぁ仕方ないよな」
果たして昔はどうだったか。
「…樹実の時はもー戦場でしたよね」
「そうだな。樹実だからな」
あの殺伐とした部署を思い返す。
副部長席は空いていて。
後輩もいて先輩も同僚もいたが、まさか皆でテロを起こすだなんて、考えもしなかった。
しかし多分、結託あっての物だったから。
「樹実は今頃モヤモヤしてるだろうなぁ、流星」
「ん?」
「いや…。
なんだかんだ明るくいようとはしてたからなぁ」
「まぁ…」
喫煙所の灰皿が見える。
奥の灰皿で潤と辻井が何かを話していた。
が、潤が俺たちを目で合図すれば、背を向けていた辻井がやけに笑顔で振り向き見ては「じゃ、」と、マトリ部署に戻るのだろう、こちらに歩いてきた。
「ども、」と言ってすれ違う。
テキトーに政宗は「ああ」と挨拶を交わすが、俺は頷くのみで、
「なんだよ来たの?」
と言う潤は、もう一本タバコに火をつけた。
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