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なんとなく今話題になってた潤と辻井。
複雑な心境で政宗と潤の前に立って風避けに左手を添えてタバコに火をつければ「ひっひっひ」と潤が無邪気に笑った。
「様になってんなぁ、旦那ぁ」
指輪か。
「なんだよからかうなよ」
「ねぇねぇどっちから?てーかどこまでってのは大体わかるから聞かないんだけどいつ?」
「なっ、」
すっげぇ早口。
大丈夫かよお前。
「それは俺も気になるけど飲みに行ったらにしようぜ潤。俺は今お前のことが心配で仕方ないけど」
「えぇ?なんでなんで」
「潤、お前テンション高くねぇかマジ」
ひっひっひと笑っている潤は最早「超高い」と若干躁病気味。
お前マジで運ばれたら面倒なんだけど。
「大丈夫か潤」
「超余裕」
「マジで今日キてるぞお前」
「不眠続きであれかも」
「マジで大丈夫かお前」
さっきまでの不機嫌が吹っ飛ぶくらいとかお前ホントにわかりやすすぎるだろ。
「…まぁ、今日は行けねぇなこりゃ」
「え、そんなヤバイか俺」
「自覚ないあたりめっちゃキメただろお前」
「流星、ここマトリあるから」
「意外と今日は普通だよ胃は痙攣してっけど」
「マジで勘弁してお前この前じゃんか」
「お前もじゃん」
「いや、まぁそうなんだけど」
言い返せねぇ。
「大丈夫大丈夫。いまちょーど抜けてきてるくらいには寝たから昨日は」
なんなのこいつ。
「…で、なんで家帰ってないの」
声を低くして政宗は潤に訪ねる。
フィルターギリギリのタバコを揉みまくって消し、葉が若干散らばっている。
それを合図に戻ろうかと思ったが即一本出して火をつけた政宗に「なんとなくだよ」と潤は少し俯いて答えた。
「春は気圧がうぜぇから」
「女子みたいな言い訳だなおい」
「そーゆーもんなんだって、俺みたいなヤツはね」
わりとゆったりとタバコを吸い落ち着いた様子で語るように言う潤は、確かに少し情緒ある表情。
「…夢に出ちゃうんだよねぇ」
何が、とは潤は言わないが、察してか先にふらっと元の道へ歩き出し、「このままマトリ行ってくる」と言って片手を上げて去っていった。
うーん…。
「どうにも…」
おっさんはモヤモヤするらしい。
「まぁ、あいつもガキじゃないから…」
「ジジ臭い宥め方だな」
「…カルシウム取ります?マジ今日政宗凶悪」
「あぁ、司法解剖寄ってくるわ。まだ里中の結果、貰ってねぇんだよ」
「あぁね」
俺が大ヘマこいたからね。
これは先輩には悪いが早々に立ち去ろう。
「先戻ります」
とだけ告げて先に戻ることにした。
「あぁ、またな」
を背中に聞いて元の道へ行く。
にしても。
「祥真かぁ…」
確かに、あいつの素性。
なんならユミルの素性だってよく知らないし、樹実も雨さんもそうだ。潤だって知らないことは当たり前ながらある。
祥真と潤に繋がりがあるなら、それはどうして潤が隠しているのか。まずいネタなのか、単純に職業柄か。
だが戦闘においてはヤツは多分、誰よりも俺の癖を知っている。俺も多分そうだ。あいつは背後が弱いだとか、そんなことだけど。それくらいでテロ現場の対処は、一番やって来た相手だ。
ま、プライバシーは大切だけど。
一人歩いて部署まで戻れば「ちょっ、待って、」と潤の声がした。
方向的にはマトリより手前の、
どこだろ、トイレ?洗面所?
いやあんま考えたくないなと思いつつ「潤?」と声をかけてしまう俺がいた。
トイレは全部開いていた。
洗面所に、流しに両手を付いて水を出しっぱなしにして俯く潤と、背後に立ち尽くし焦るような辻井がいて。
「潤?」
声を掛けたら気まずそうに俺を見る辻井。
「どうした」
言うも「いや…」と辻井はどもるが潤は、出しっぱなしの水道を眺めて本気で具合悪そう。
さっきのハイテンション、どうした。
てか、何があったの聞きたくないけど。
「…辻井、あいつは?」
辻井に話を振るが、潤が「なんでもねぇよ」と水道を止め、漸くこっちを見ては口元をハンカチで拭ってふらっとしながら壁に凭れてダルそうに前髪を掻き上げた。
「ちょっと目眩がしたんだよ。若干二日酔い。鎮痛剤飲んだらゲロったわ」
「…はぁ?」
なにバカみたいなことしてんのお前。
「い、いやぁ、俺が昨日飲ませ過ぎて」
「え、そーなの?」
明らかに嘘吐いてる顔してますけど。
流石に潤も「いや下手クソだなお前嘘」と辻井を非難。
「お前となんて飲み行かねぇじゃん」
ひきつった、痛々しい笑顔を作り「はぁ…」と辻井に言わせた潤はそのままふらっと辻井の元まで行き、弱々しくも肩をぶっ叩いてから「あぃ、戻るよぶちょー」と力なく言った。
「あぁ、はぁ」
腑に落ちないが仕方ない、これは肩を貸した方がいいのかとか考えたが、酔っぱらいのように寄りかかってきた潤が言う。
「マジ黙っといて」
「え?」
なにが?
「…部署までにはちょっと元気回復すっから」
「…なに、グロッキーなの?」
「いや急にきた薬中あるある」
「マトリすぐそこだから言い方考えろよバカ。
薬抜けたって言ったじゃん」
「抜けたからキたんだよ。あのおっさんのイライラなかなか昔からストレス」
「あぁ…」
確かに。
「…気にしてたから政宗」
「マジか。じゃぁ飲みに行こう」
「え、大丈夫かよ」
「大丈夫だよ。帰れっから」
これは…。
「うーん、後半元気だったら考えるわ」
無難に返しとこ。
つかなんなら家まで送るわ怖いし。
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