13
「もしもし」
『はい、黒田です』
「悪いね。終わったらそのまま上がってくれ。結果は明日聞く。忘れ物とかないよね?」
『はい…どうしました?』
「ちょっと俺らこのまま部署に戻るから。愛蘭にもそう連絡して」
『…わかりました。お疲れさまです』
「お疲れさん、いい夢を」
電話を切れば、無言が広がる。潤は潤で思うところがあるようだ。
俺がタバコに火をつけると、潤もそうしたのがわかった。
「悪かったな」
「…どうした急に」
「こんなクソで悪かったなって言ってんだよ」
「お前わかってねぇな」
そこなんだよなぁ、潤。
「あ?何が?」
「お前絶対それ政宗に言うなよ。今度は多分殴られるからな」
「なんでよ。そーゆーことでしょ?
はいはい罵れよって感じ。うるせぇんだよお前ら人の気も知らねぇで」
「そりゃあ知らねぇよお前の気なんて。お前が政宗の気を知らないのと一緒だよ」
「あぁそうだね、悟ってろよお前はよ」
なんだかでも…。
思わず笑ってしまった。
「何笑ってんの?」
「めんどくせぇなって思って」
ホントめんどくせぇ。
「潤さんや」
「なんだよどこぞのばばあかよ」
「どんな無茶プレイしたんだよ」
「はぁ?なんでそれ聞くんだよ。お前ね、デリカシーなくね?」
「お前に言われたくないよ。お前一から十まで諒斗に聴かせてたんだからいいだろ。羞恥心あんのか?
俺が怒られる参考にすんだよ」
「ありとあらゆるだよ、この変態 」
「ふっ…はっはは!何それわかんない!ジャンキーと?」
「危うく静脈注射だったよ」
うわぁぁ。
「あぁ、それはダメだなぁ」
「…うん、ダメだね」
「あとは?」
「うーん、まぁ、なんて言うの?あぁ、やめよう、ハズいわ」
一応羞恥心はあるらしい。
「多分怒ってんのそこだよ」
「…は?」
「…お前、ある意味自傷癖だよな」
一瞬言葉に詰まり、考え、「…そんなことねぇよ」と、消え入りそうな声で呟いた。
少しすると、政宗がコンビニ袋をぶら下げて戻ってきた。
無言で車に乗り、袋を渡してくる。中は、3人分のタバコと2本の缶ビールとコーヒーだった。
自分はマルボロとコーヒーを取り出す。
「ありがとうございます」
そう言って俺はアメスピとビールを取りだし、潤に残りを渡した。
「…ありがと」
取り敢えずビールと、政宗はコーヒーを空け、乾杯した。
「…諒斗が心配してたぞ。お前殺されかけたってな」
よかった。てめぇからお前に戻った。少し頭は冷えたらしい。
「…そーゆーこともあるよ」
「諒斗泣きそうだったな」
「そーゆー趣向の奴がいたんだよ」
「へぇ…」
どっちか聞くの怖いんだが。
「なかなかなもんでしたよ。みんな異常。こっちがアドレナリン出るレベルにね。おかげで頭がフル回転したよ。押さえなきゃなんない内容がバンバン出てくんの」
「…お前もだいぶアドレナリンジャンキーだな」
「お前と一緒にすんな。お前は人殺してなんぼだけどこっちはセックスしてなんぼだ」
それわりとぐさっとくるな。
「…お前と決定的に違うのは、お前は死にたくて仕方ないがこっちは生きたくて仕方ないんだよ。わかる?わかんないよね」
「うるせぇな」
別に死にたくねぇよ。
そんなもんすらもうねぇよ。
「取り敢えず諒斗が耐えられなくなるからお前セックス禁止」
「えぇぇ!嫌だ!」
「ふざけんな。てめぇ仮にも国家公務員?だろ!」
「じゃあてめえが抱けよな」
「はぁぁ!?姫、いくらなんでもうーん…お前わりと女顔だよな」
「政宗、失格。
お前潜入捜査をいいことに何してんだ。撃ち殺すよ」
「そういう流星は…」
あ、そうだ。
「腹痛え」
「バカじゃねえのクソ部長」
「お前こそこの絶倫隊長!」
「てかお前ら大丈夫だよな、薬盛られてねぇよな。俺そこ心配してんだよ」
「抜かりねぇよ。そんなヘマやるくらいなら捜査降りてるわ」
そこの常識が潤にあってよかった。
「さて、帰るか…」
そう言って政宗は一息吐いた。案外早く喧嘩が終息してよかった。
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