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しかしなんだろうか。
 久しぶりに会ってみて、楽しい。楽しいがどうもこいつと会って懐かしいなと思う感覚の一つ。

「猫はネズミ駆除に役立つよ」
「あぁ、そうかい」
「最近ネズミがうるさくてねぇ」
「へぇ、どんな」
「うーん、あれはどんなかなぁ。
 異端ではあるんだろうな、組織的に見れば。社会的に見れば明らかなる犯罪者だな」
「…ふーん」

 腹の探り合い感。
相変わらず食えない男だ。

「確か東京だったかなあ」

てことは警視庁か。

「猫いらずでも蒔いたら?」
「ははー、それ東京都民に言っても伝わらないよ。黄燐《おうりん》とか亜非酸《あひさん》のあれね。それ蒔いたらそれこそテロリストだよ」
「ネズミなんだろ?」
「まぁね。
 俺の付近を最近ちょろちょろちょろちょろとうっさいんだよ。ただまぁ大形だから猫いらずじゃ死なないかな」
「チーズに混ぜたら?偏食家でもないし設定的には成人してるだろ」
「リュウおもろいね」

あ、出たニヒル笑顔。本業スイッチ押したな。

「ウチの猫ちゃんだったら取ってくるかなー。でもなぁ、トムくらい直情型だけど殺しはわりと好きじゃないんだよなぁ」
「ウチのフィリックスはわりと狩りが得意だよ」
「へぇ、ガン首持ってくるくらいはする?」
「お前ってそーゆーとこあるよな」
「いや冗談だけど。
 俺はさ、裏切り者はわりと嫌いなんだよ。内部抗争とか、面倒臭いじゃん?」
「あぁ、まぁ」

確かにこいつはそういうの、散々見てきたからな。

「まだジェリーより幼い子だから躾程度でいいかと思ったが、ダメだな。なんせ警視庁の内部情報を外部に持ち出してるからな」
「ほー、そりゃ悪いヤツだねぇ」
「しかもさ、もう完全に墜ちちゃってるようだよ。最早それって、警察じゃないよね」

はぁ、そうですか。

「なんだったかなぁ…。なんか今追ってるテロ組織の捜査本部関係者じゃないかって」

なんだって?

「…随分日本に詳しくなったな、ショウ」

それはつまり俺に殺れと言うことか?

「まぁ、俺しばらく勤務地が日本になりそうだから」
「へぇ、実は俺も」
「マジか。そのパターンってもしや」
「あぁ。見た目は解任されたことになってるよ」
「あー、雇用主が日本人って大変だなぁ」

 今度はウィスキーを煽っている。やっぱりこいつは変わらないかも。

シニカルでニヒルな、自殺願望スナイパーだ。

「俺ら似てるな」
「どうかな」
「でも多分、端から見たら真逆だな」
「そうかもな」
「流星」
「なんだよ。あんまり名前で呼ぶなよ」
「なんで?プライベートならいいだろ。 俺、君の名前も好きだよ」

 そう言って笑う笑みは、柔らかいものに戻っていた。

「そろそろ帰るか?猫がうるさいんだろ」
「そうだな。お前んとこは?」
「今日はちゃんと言ってあるから。帰ってくるかなぁ」

本気でご執心だな。

 会計を済ませ、二人で店を出た。取り敢えず電車で帰らなければ。

「流星、」
「あぁ、そう言えば呼ばれたな。何?」
「…無茶はせず。取り敢えず気を付けて」

こんな時に。
そんな優しい顔して言うもんかねぇ。
ホント、変わったな。

「あぁ」
「ありがとう、楽しかったよ」
「こちらこそ」
「また生きて会おうな」

まさかこいつの口からそう聞ける日が来るなんてな。
何がお前をそこまで変えたんだか。

「…あぁ。
 おやすみ、祥真」
「…うん。いい夢を」

 そう言って別れた。最後に見た笑顔は、どこか嬉しそうだった。

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