13


「はぁ、校長先生ねぇ。大変ですねぇ新任もねぇ。
 で、お話とはなんでしょう?まぁ、たくさーん時間を取って頂いたので大体の話は聞きましたけど俺と真里は、
あ、真里ってこいつね。真里、一応先生に名乗っときな。礼儀だからな」
「あぁ、そうですね。
 申し遅れました。小夜の保護者の神崎真里《かんざきまさと》と申します」
「あ、あぁ、こちらが…。すみません、改めまして、担任の荏田崇人と申します」

 マリちゃんはそれに、凄く興味も無さそうにちらっと見るだけだった。

「で、俺と真里はね、あんたから直接聞きたいわけですよ先生。
 何話って。何があったわけ?」
「はい…。僕も小日向さんから聞いたというか…。
 放課後くらいの時間に、小日向さんが…えっと不良の先輩と職員室に訪ねてきまして。不良の先輩は血塗れだし小日向さんは格好が乱れてるし。
 まぁ職員室で、呼ばれて行ったら不良の先輩が、救急車を呼んだと。そう言ったので現場に駆けつけたら他の男子生徒が倒れていまして。小日向さんに聞いたら、その倒れていた男子生徒にイタズラされたと。それを不良の先輩が助けてくれたと。ただ、不良の先輩はちょっと相手を殴りすぎちゃったから救急車を呼んだのだと言うことでして…。
 一応小日向さんは何もない、大丈夫だとおっしゃっていますが、まぁその、暴力沙汰に関わっていますし、その…色々あったので病院や心のケアなどもお願いしたいかなーと…。
 心配だったので今日は取り敢えず自宅に送ろうかと思いましたが、バイトだし、ご家族と一緒にバイトをしているということでこちらにお連れしました」
「なるほどなるほど。小夜ちゃん、間違いないね?」
「はい、ないです…」
「真里、言いたいことはあるか?」
「うんまぁたくさん。けどまずあんたからどうぞ。年功序列です」
「あっそう?はーい」

 柏原さんは大きく息を吸ってまず一度水を飲んだ。多分、水だ。そして営業スマイルを捨てた。

「まずね、監督不行き届きってのはどーゆーこと?」
「いや、やっぱり…自分が受け持った生徒なので…」
「うん。それはわかる。それだけの意味で間違いないね?」
「?はい」
「あっそう。大変だね。その言い方だと24時間体制だね、なんて揚げ足取りはまぁいいとして。
 本当に監督不行き届きと思ってるならね、心のケア?あんたやってくんないの?」
「いや、それはこちらもやりますけれども…」
「あと今後だよね。今後どう対策練ってくれんの?どうすんの?うちの可愛い小夜ちゃんに何てことしてくれてんのそのクソガキ共は。本当ならそこに並べて一人一人血祭りにあげてやりたいレベルなんだけど大人だからそんなことしねぇよ。でも心配だよね。もしまたそんなことが起こったらどうしようって。
 勿論小夜ちゃんには気を付けなさいって言うけど何?男の子4人でトイレ連れ込んだんでしょ?んなの気を付ける云々の話じゃないよね。マジ柔道やらせないと無理だよね。だからっていって先生に常に一緒にいて?なんて言わないよ?
 じゃぁどうすんの?
 ねぇてかね、話を戻すよ?なんで起こっちゃったと思う?
 まずね、今回の子達はどんな子?知ってる?」
「え?」
「浦賀先輩のクラスの男の子たち…です。浦賀先輩はどうやらあんまりよく知らないみたいだけど彼らは…なんか…」
「そうなの?」
「はい、先生こーゆーときに使うんだよ監督不行き届きって言葉を!
 小夜ちゃん確か1回絡まれたことあるんだよね?」
「はい、」
「それ言った?」
「いや…」
「まず小夜ちゃんそれもダメ。なんか変な奴いたよってなんで先生に言わないの?言う機会なかったの?」
「すみません…」
「今回ね、たまたま助けてもらえたからよかった。けど、奇跡だからね。お前ね、そんなんでレイプされるやつ世の中に何人いると思ってんだよ。洒落になんねーよ。そんなんでずたぼろになったらお前の親父さんに俺らなんて言ったらいいんだよ」
「ま、まぁ…そんなに怒らなくても」
「うるせぇな無能は黙って校長に叱られてろよクズ。大体てめぇがもっとしっかり生徒一人一人見てりゃこんなことになんねーんだよエセ教師。コミュニケーション!教師と生徒!なんでまず気付かないのお前。気付きそうなもんだけどね今回パターンは。俺だって話の途中で気付いたわ。お前信頼されてないよ新任!てめぇは黙って教科書に付箋張ってろバーカ!」
「柏原さん、言い過ぎだから。
 先生すみませんね、この人久しぶりにキレちゃったみたいでね」

 宥めながらも真里ちゃんは荏田先生のことを睨んでいた。

「おかげで喧嘩になっちゃったな、小夜。気を付けろよ。自分の身は自分以外守れないようだからな。
 今日はわざわざ店の前まで小夜を送ってくれてありがとうございました。
 あ、そうそうその不良先輩?の病院、あとで教えてくださいよ。俺ちょっと挨拶行くわ。なんせ…ね。柏原さんも行くっしょ?」
「あぁ、そりゃぁもう!
 その子はスゴいね!いやぁ、そんな根性ある子なかなかいないよね今時。お礼くらいしなきゃ。先生知ってるよね?」
「いや…僕も今から電話して聞いて行こうかなと…。
 ちょっとだけお待ちいただけますか?」
「あーはいはい。どうせ今日は俺たち行かないから明日小夜ちゃんから聞くよ。どうせ行く気なかったでしよ?」

 先生も最早ボロクソに言われて意地になったのか、その場で電話を掛けていた。

「あ、もしもし。荏田です。はい。あのー、浦賀くんの病院を、小日向さんのご家族の方が知りたいといっていまして。はい…」

 荏田先生はポケットからメモを取り出してメモる。最後に丁寧に挨拶をして電話を切った。

 そのメモを柏原さんに渡し、

「この度は、至らない点が多々あり、大変ご迷惑をお掛け致しました」

 と、深々と頭を下げ、そそくさと店を去っていった。

「柏原さん…」
「ん?」
「私も本当にごめんなさい」
「うん。気を付けてね。男は怖いんだから」
「はい…心配かけました」
「ひとつ聞くけど、なんともないのね?まぁちょいハズイとは思うけどここわりと重要だからね。あとで妊娠してましたってなったらおじさんマジ卒倒するからね」
「まぁ触られたくらいなんで…」
「触られた?
 あー…。よかったもっとね、えぐいの想像した。小夜ちゃんには悪いけどってえぇぇ!だんだん来たぞ触られた!?え、マジ!?」
「恥ずかしいから言いたくない…」

 思い出したら羞恥心の方が今は勝る…。
 てかどんな想像したのよ柏原さん…。

「あ、ごめん、」
「柏原さん…あんたサイテーだないろいろと。小夜、もういいよ忘れな」
「いやごめんって!安心したら余計にこの心の隙間に怒りが…!くっそ学校爆破してぇなんなんだ、俺のこの怒りはどうしたらいいんだよ真里!」
「わかったよ!俺がイライラする時間なしかよ!
 今はわかった、みんなで忘れよう、うん、それが一番平和。あ、ほら不良くん!ね、ほら!なにあげる?」
「神〜!マジ神〜!もう神社めぐってお守り全部あげよう。そんくらい神だよ」
「意味わかんねぇし嬉しくねぇだろうなぁ、それ」
「てかさ、この事件アレだね。
 間違って今光也が帰ってきちゃったら間違いなく言っちゃダメだよね」

 あぁ、確かに。
 多分死んじゃう。

「うん。ダメだね」
「トチ狂って関係者全員殺しちゃうよね多分」

 思わず笑ってしまったけど考えてみたらあり得る。

「取り敢えず…遅くなっちゃったけど…お店開けましょうか」
「あっ」

 時計を見ると18時45分。大変だ。

 それから慌てて3人でお店を開けた。
 看板を出したときに見えた春の夕日はもう、沈みかけていた。

- 14 -

*前次#


ページ: