17
その後雪子さんは揚げ出し豆腐を頼んで食べてすぐに帰った。
本当にお返しを渡しに来ただけだようだ。
また今日も、「また来ます、ごちそうさま」と言ってくれた。
なんだか今日は疲れたなぁ。
あっさりと閉め作業は終わった。ふと昼間を思いだし、またチョコ攻撃かと思ったが、流石にキツかったようで、チョコ達はテーブルに並ばなかった。
さて夕飯を食べようというときだった。
「光也さん、」
なんだか真里がそわそわし始めた。何だろう。
「ん?どうした?」
急に真里が席を立って一度キッチンに入った。そして、なんだかタッパーを持って戻ってくる。
「…はい」
素っ気なくタッパーを渡され、戸惑っていると、「開けてみたら?」と小夜に言われた。
タッパーを開けると、ラム酒のような匂いと白と茶色のトリュフ。ちゃんと綺麗に一つづつがペットカップに入っていて、綺麗だが手作りだとわかった。
まさかこれは。
「バレンタイン?」
「…うん、そう」
照れ臭そうに言い、俯いてしまった。
「作ったの?」
「…いらないならいいんですが」
「いや、」
取り敢えず茶色い方を一口食べた。ビターにラム酒が混ざってる。
まじまじと3人の視線が集まる。
「うまい…」
わりとこんな味のチョコ、好きかも。
白い方にはレーズンが入っていた。
甘さ控えめ。これくらいが丁度いい。
「まぁ、その、なんだ。たまにはこーゆーのもいいかなぁて思いまして…」
「うん…」
「うーん、あー…。うん、まぁそーゆーことです」
なんだお前は。女子か。
「いつも一緒に居てくれてありがとう的な?これからも出来る限りは…。
あーだめだ。なんて言ったらいいかわから…」
取り敢えず白トリュフを口に入れてやる。戸惑ったようだが黙って食った。ちょっとハムスターじみてる。面白くてちょっとにやけてしまった。
すると真里は突然抱きついてきた。こんな、なんか堂々として人前とか本気で初だ。
「マリちゃん…」
「イチャイチャしてますねぇ…」
これ、晒しもんじゃね?
「ちょ、マリちゃん?俺困惑」
「うるさい…」
しかしお前は。
「ふはは!お前大したヤツだな!」
つい笑ってしまった。取り敢えず頭をぽんぽん。
「…わかっていただけました?俺さ、」
「うん、つか今更かよ!
…ありがとう、真里」
こんな時きっと全国のときめく女子たちは、精神すり減らしてるんだな。好きな人を想って、勇気出してんだから。
てかこの陰謀は少しずるいな。
「モテるねぇ光也くん。来月が大変だ」
「ヤバイ、なんか私泣きそうになってきちゃった」
「え?」
そこから小夜が泣き出してしまって事態は大変カオスな状況になり、収拾がついて帰りがいつもより遅くなったのは言うまでもない。
バレンタインというチョコ会社の陰謀。しかしこれは会社だけじゃなく人の陰謀も入り交じっているなと、今回は学んだ。
せっかくの勇気だ、もう一度ある陰謀第二段に乗ってやろうじゃないか。
それから俺は数日して、パティシエ、柏原のもとに短期間弟子入りしたのだった。
- 51 -
*前次#
ページ: