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 それだけ言って家のドアを開けると、姉貴がそこに立っていた。

「うぉあっ!びっくりした!」
「遅いわぁ、待ちくたびれたぁ」
「仕方ねーだろ!」
「ほれ、早よ行くで!夕飯作るから!」

 そう言って姉貴は先にさっさと車の方へ向いて歩き出した。

 小夜の前にしゃがみ、肩に手を置いて顔を覗いた。

「あーあ、まーた不細工になったな。
 ほれ、荷物持ってやるから。行こっか」

 涙を拭ってやり、荷物を預かり、手を繋ぐ。そして二人で車の後部座席に乗り込む。
 気付けば、小夜の分のココアも左側の後部座席に移動している。

「さてさて、何食べようかなー。小夜ちゃん何食べたい?」
「えー?麻婆豆腐」
「いやお前に聞いてないねん」
「じゃぁ牛丼」
「うっさいな、黙っときいや」
「ふふっ」
「あ、ほら笑われとるで」
「お前がな」

 そんな他愛のない会話をして、帰りは四つ葉スーパーに寄った。結局、夕飯はハンバーグになった。

 しばらくしてから小夜は、疲れたのか寝てしまった。膝枕がちょっと痛い。

「これがあんたの決断なんやね」
「うん。
 あんなヤツのとこに置いておけん」
「で、どうするん」
「……わからん。
 小学校とか通わせられねーしな。
なんとなくだけど、いや、話してみないとわからんけど。
 父親とはなんだか良い思い出とか、あるのかな。もしそうなら、父親を探す。生きてるか死んでるかどこの誰かもわからんけども…。
 俺はそれまで取り敢えず何か出来れば……。しか、思い付かん」
「全く。相変わらず支離滅裂やな。父親も小夜ちゃん捨てたんやで?」
「うん。それもちゃんとわかってるよ」
「現実は甘くないで!」
「うん。
 もうちょっと考える、ちゃんと。施設とかどうかな、とかさ。取り敢えずはあの女から引き離した。それが後に問題になるなら、なんとかする。しなきゃいけない。預かったからには」
「…アマちゃんやなぁ。
 けどまぁ、なかなかかっこよかったで」
「えぇ?」
「小夜ちゃんのおかげで抜けた腰が元に戻るかもしれんな」

 取り敢えず、生きる目標がひとつ出来たのは確かだった。

「さて、お父さんとお母さんにはなんて言ったらいい?ありのまま話したらどやされるに決まっとるやろ」
「ん?」
「心配しとったで?だから今日だって来とるんやないか」
「んー、そうだなぁ。まぁ、バイトキツそうだけど元気だ、くらいで」
「そろそろ…テキトーに顔出してやったらええのに」
「まぁ、そのうちな」

 上京してから疎遠になっている。特に何も話すことがない。親って、そんなもんなんだろうか。

「…せめて電話くらい、な?」
「うん…」

 そう言ってまた、しないんだろうな。

「でも…」

 なんか少しくらい、電話くらいならしてみてもいいかな。ふと、そう思った。

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