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 家についてベランダでタバコを吸っていると、小夜もベランダに出てくる。

「寝ないのか?」
「セミ泣いてない」
「そう言えばそうだな」
「みんな死んじゃったの?」
「寝てるんじゃないか?
 あ、思い出した。小夜に図鑑買ってきたんだ」
「ずかん?」
「そう。虫のじゃないけど。花の図鑑。|紫陽花《あじさい》好きだったみたいだから」

 タバコを吸い終えて二人で部屋に戻る。鞄から図鑑を取り出して渡した。

「これね、花のこと詳しく書いてあるんだ。例えばさ」

 小夜から受け取って二人で紫陽花のページを開いて二人で見てみた。

「アジサイ。ミズキ目アジサイ科。5月〜7月に赤紫から青紫になります。日本には約14種類…へぇー、そんなあるんだな。毒があるので園芸や切り花の際には要注意!」
「毒…!?」
「な、あるんだなー。綺麗なバラにはトゲがある、みたいなね」
「あぁ、バラある!」

 眠くなってあくびが出た。歯を磨いて寝ようかな。

「小夜も寝る準備して寝るぞー。もう遅いし」

 ケータイを見るともう0時近かった。まぁ明日はちょっといつもより遅めだし、キツいけどまだマシかな。

「小夜先寝てて。俺風呂入ってないから」

 小夜は頷く。小夜の定位置はベッドの壁際。

 タオルケットを掛けたのですぐ寝るかと思いきや、小夜は先ほどの図鑑を開いて読み始めた。
 やっぱり少し寂しいのかな。風呂入ってないけど、まぁいいや。

 小夜の隣に寝転んだ。小夜は不思議そうに俺を見ていた。

「お風呂は?」
「小夜が寝てから入るよ。そだ小夜、漢字どこまで進んだ?」
「7級!」
「おっ。したら勝海と竜太郎の名前書けるかな?」
「りゅう太郎くんまだ出てきてないけど教えてもらった」
「じゃぁ明日テストだ!」
「あ、勝海くんもてすとって言ってた」
「そっか。俺が帰ってくるまでに勉強しとけな。いい点取れたらご褒美な」
「…がんばる{emj_ip_0792}」
「よし、明日のためにも今日は寝ような」

 そう言って頭をぽんぽんとすると、小夜は目を瞑った。頑張って寝ようと決めたらしい。しばらく隣にいてやると、小さく腹が動いた。

 ようやく寝たので俺も風呂に入って寝ることにした。

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