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結局その後、3人でデミグラスのオムライスを作り、ワインを2人で1本空け、お互いの過去話に花を咲かせた。
俺が風呂から出てくると光也さんは小夜の髪の毛を神妙な顔で鋤いていた。その二人の姿は、まるで兄妹みたいだ。
「そろそろ髪の毛切るか?」
「ん?」
「いや、伸びたなと思ってさ」
「とこやさん?」
「面倒だから俺が切ってもいいよ」
そう言えば家漁ったとき、やけに本格的な美容師グッズあったな。あれってもしや…。
「そう言えばハサミあったな」
「あー、うん。昔ちょっとね」
「あんたどんだけ資格あんだよ」
「フリーターって暇なんだよね」
だろうな。じゃなかったらそんな持たないよな、資格なんて。
軽く髪の毛を乾かしてやるその手つきがちょっとプロっぽい。
一通り終わると、「さ、そろそろ寝ないとな」と小夜の頭を撫でた。
「おやすみなさい」
そう言って小夜はベットの壁際へ寝転んだ。クマを二匹とも抱えている。
俺は光也さんの髪を拭いた。思わず触りたくなった。
「髪綺麗だなーどーやったらこーなるの?」
「特になんもしてねぇよ?真里染めてるからじゃね?」
「確かにめっちゃ染めたからなー」
光也さんはふと、ストックしてあった山崎をグラスに注ぎ始める。
「え、マジ?」
「一杯だけのもうかなーって。飲む?」
「…じゃぁ」
こいつ、ホントほっといたらろくでもねぇ暮らしするんだろうな。
テキトーに氷を入れて指で軽く混ぜる。その動作をちょっと邪な目で俺は見ていた。
「何?今日は飲みたい日なの?」
「さぁ?そーでもねーけどなんとなく目の前にあったから」
あーあー、嘘吐きやがって。ちょっとピクッとしたぞ。
まぁそりゃそっか。仲良しなねぇちゃんと決別してきたんだからな。
「まぁ小夜も寝たし酔っぱらってもいいだろう!」
「やったね」
そう俺が言えば一気飲みして更にもう一杯注いだ。
「ただ、あんま調子に乗ると明日仕事だからな?」
「わかってるよ」
「で、飲んでどうしたいの?」
「ん?」
「話したいの?寝たいの?忘れたいの?それとも自棄?」
「…なんだろうな。特に何もない。ただ飲みたい。自棄だったら多分そこのスポドリで割ってる」
「…なにそれ怖っ!死ぬぞ!」
「あー、それで1日のびてたことあったよ」
「あんたってヤツはホント…」
「まぁバイトない日だったからよかったけどねー」
「そーゆー問題じゃないから」
光也さんはふと、笑い始めた。
なんだろ、気が触れたのかな。
「な?結構クズだろ?」
「…」
「お前ね、人を見る目がない。俺だったらこんなクソッたれ絶対選ばないな」
「うるせー先輩だな」
わかってないのはあんたの方だ。
山崎を流し込む。これ結構喉にくるんだよなぁ。
さっきから遊ぶようにくるくると氷を回している。なんだよ可愛いなぁ。俯いてる顔も哀愁あってそれがなんだか色っぽくて。
「資格ってさ、他に何持ってんの?」
違うこと考えよっと。
「んー、なんだっけな。
バーテン、美容師、調理、あとなんかパソコン系と、なんだろうな…でもほとんど大したことない級だよ。かじってるだけだから。建築もちょこっとやった。資格じゃないけどギターとか三味線とか楽器もやったしなぁ。
姉ちゃんに言われたわ、何やっても続かないって」
「そうかぁ?バイトとか長いじゃん」
「うん。バイトはね。
俺なんかね、あっさり切れちゃうんだよな、どっかで。でもなんだろ、全部思い入れがない訳じゃないんだ。ただ、切っちゃうんだよな」
「…自己防衛なんじゃねぇの?」
「ん?」
「あんたどっかで切らないとさ、多分はまりこんで堕っこっちゃうんだよ。だから本能的に、自分が気付かないところで切っちゃうんじゃない?
あんた見てるとそんな気がする」
「ホントにそうだったら、やっぱりクズだな」
「そうか?俺は良いと思うけど?
だってよ、堕ちるかもしれない、本能が悲鳴あげる直前まで夢中になるって、なかなかねぇと思うぜ?」
「……」
まだくるくるしてるよ。ちょっといたずらしてやりたくなるよなこれ。
俺がその手を握るように手を置いたらちょっとビックリしてこっち見る。
小動物じゃねぇんだからよ。
「さっきからずーっとくるくる、遊ばないの!」
「無意識だわー。
いやーなんか分離するとちょっとなー」
光也さんはすぐ手を引っ込めて一気に飲み干した。やり場がなくなったのかそれから体育座りをしてる。
「満足した?」
「ん?んー」
あれ、結構酔ってんのかこいつ。
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