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「みっちゃんとマリちゃんは?彼女いないの?」
「うわぁ、痛いとこ突くね小夜ちゃん」

 あれ、言っちゃいけなかったかな。

「真里一瞬できたじゃん。オカマバーの」
「やめろよマジそれ」
「オカマ!?」
「そうそう」
「だから違うって。まぁそりゃぁ起きたら隣で寝てましたよええ。ケダモノ!って叫んで追い出したわ。
 マジ覚えてないんだよなー…。オカマのスッピンマジヤバイぜ」
「マリちゃん怖い…」
「え、ちょっと引かないでよ」

 そりゃ引くよ!何それ凄く聞きたくない。

「聞かなかったことにする」
「それがいいな。俺も忘れてやるよ怖いから。第一発見者だったことも忘れるよ」
「マジ掘り下げないでホント。黒歴史だから。いやでも服ちゃんと着てたから!」
「あ、そうなんだ」
「小夜それで納得するのか。よかったな真里」
「光也さん性格悪いな!だったら言うよ?あんたも変なやつばっか捕まえてるだろうが!」
「いや、そうか?彼女は別にいなかったよ」
「みっちゃんの話なんとなく聞いたし見た!絶対まともじゃない!」
「いや、まともじゃないのがたまにいるだけだよ。基本的にはフツーだよ。
 今度二人でどっか行きましょ?無理です、で大体は終わるよ」

 そう言えば二人とももう30代か。ホントに結婚とかしなくて良いのかな。

「結婚とかしないの?」
「んー、今のところ考えてないな」
「モテるのに?」
「いやいやそんなことないからね?」
「またまた〜」
「言っても無駄だよ小夜」

 そういうマリちゃんはもはや、仕方ないなぁとでも言いたそうな顔だった。

 二人ってホントわかり合ってるんだなぁ。

「マリちゃんは?」
「俺?俺は絶対しないよ。独り身独り身。俺そーゆーの無理だもん」
「マリちゃんの奥さん絶対幸せになると思うけどなぁ」
「奥さん?不幸になる一方だよ。
 てかまぁ、ぶっちゃけてもいいかね?」

 みっちゃんに何やら確認を取るように話を振った。なんだろう…。

「年齢的にはいいんじゃない?小夜、俺らが思ってるより大人だし。あとはお前と小夜次第だろ」
「え?」
「うーん、まぁ嫌いになっちゃったらごめんね。
 俺ホモなんだよね」
「あ、そうなんだ」

 え、えぇー!嘘ぅ!

「ホモってホモサピエンスじゃない方?」
「うわ、動揺なんか隠してくれてありがとう。
 いやそれ言ったらお前もホモじゃん?」
「あ、そうだね」

 びっくりしてるのバレてる。

 でもなんか、妙に納得する自分がいた。ストンと胸に落ちたというかなんというか。

「なんて言ったらいいかわかんなくて…。
 確かにびっくりだけど、なんか納得しちゃった」
「あ、そう?」
「うん。別に嫌いにならないや」
「そっか。ならよかったわ」

 あれ、でも…。
 一回彼女いたような気がするなぁ…。前に会おうって言ったとき、それで予定合わなかった気がする…。

「あれ?でも…」
「うん。いたよ彼女」
「俺も知ってる。あの子いい子だったって言ってたよな?」
「今でもいい友達」

 そーゆーのってダメなものなのか、やっぱり。

 途中でコンビニに寄ってお酒と紅茶とタバコを買った。

 みっちゃん家は一人暮しにしては少し広い間取りだった。こざっぱりとしてて、ホントにあんまり家に寄り付かないんだなって感じがした。がらんどうと言った感じだ。あんまり帰らないからか、散らかってすらいない。

「広いね」
「ああ。最初真里と住んでたから」
「そうそう。そのうちお互い彼女が出来たり色々あって今のスタイルに落ち着いた」
「へぇ〜」
「来年引っ越そうかな」
「なんで」

 みっちゃんは部屋の電気を、「あれ、これじゃないや」とか言って手探りしている。じれったくなったのか真里ちゃんが電気を点けた。

「家主より俺の方が詳しいってどーゆーことよ」
「家主より使ってるってことだな」

 そう言うとみっちゃんはキッチンの戸棚から一升瓶を取り出した。

「あ、小夜、風呂入ってきたら?俺らテキトーに飲んでるわ」

 と言ってシャツのボタンを外すみっちゃんに、ちょっと困る。まぁ、家だからしょうがないけどさ。

「おっさん、デリカシーって言葉覚えようか」
「え?」
「JKの前で着替えようとしないの」
「いや流石に着替えないよ」

 取り敢えず顔は見れない。お風呂に行こう、言われた通り。

 荷物の中から着替えを取り出してそそくさと逃げるように部屋を出ようとすると、「あ、小夜!」とみっちゃんに呼び止められて思わず「はいぃ!」と妙な返事を返してしまう。

「え?大丈夫?」
「うん、うん。何?」
「風呂場そこの2番目の扉ね。はいタオル」
「あ、うん…」

 なんかみっちゃんがぽかんとしてる。

 タオルを受け取りやっぱり顔も見ずにお風呂場へ向かった。

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